「人がたくさんいる電車の中で、まさかあんな危険な出来事に遭遇するなんて……。夏の大冒険が、今も引きずるトラウマになってしまいました」

 幼い頃、妹が目の前で性被害に遭いそうになったという恐ろしい体験を語るのは、現在2歳の子どもを持つ田淵由利さん(仮名・24歳)。

田淵さんのケースは20年近く前のできごとですが、子どもを標的にした性犯罪は今も後を絶ちません。警察庁が発表した統計(令和3年版 警察白書)によると、令和2年、13歳未満の子どもが被害者となった強制性交等、公然わいせつ、強制わいせつの認知件数は、合計943件。1日あたり2.6件起きている計算になります。

 この数字はあくまでも“認知”されている件数。警察に届け出なかった事件もあると考えると、実際の被害はこの数字よりも相当多いといわれています。

 取材の前半はにこやかだった田淵さん。でも筆者が詳細を聞いてみると、彼女の顔から笑顔は消え、表情は一瞬で曇りました。本人が傷つかないように注意しながら、ゆっくりと当時の話を聞きました。