こうした粗品の振る舞いから、その真意を読み取ることは難しい。だが、自らのイメージやキャラクターが固着することを徹底的に拒んでいるように見える。

 直近の24時間だけでも、「粗品のロケ」のケーキ企画のほかに、「粗品 Official Channel」では競馬で1000万賭けた話を披露するライブ映像の切り抜き、「しもふりチューブ」では相方のせいやとともになか卯の豚から丼を食べている。さらに『水曜日のダウンタウン』(TBS系)ではポスト松本人志という立場で30秒ネタの賞レース「30-1GP」の審査員を務め、『読売日本交響楽団 粗品と絶品クラシック』(日本テレビ系)という、読響の演奏をほぼノーカットで流すという挑戦的なクラシック音楽番組のナビゲーターも担当している。音楽でいえば、この日は粗品の初のアルバムである『星彩と大義のアリア』(ユニバーサルミュージック)の発売日だ。その全曲で粗品はプロデュース、作詞、作曲、歌唱を手掛けている。

 こうした圧倒的な表現の物量・出力が粗品という人物の説得力を生んでいる。日本の芸能の歴史においても、活動の量と幅において稀有な人材であるはずだ。

 さまざまな粗品の振る舞いから、その真意を読み取ることは難しい。だが、おそらくはどこかへたどり着くはずだというロマンが、この人にはある。

(文=新越谷ノリヲ)