月9が「配信ドラマ」に勝つ唯一の方法
いわば“『First Love 初恋』インスパイア”が2作続いている月9。“恋愛ドラマの月9”に回帰したという見方もできるが、同時に“地上波ドラマが配信ドラマに立ち向かう方法”として、この路線を選んでいると解釈することもできるだろう。
地上波ドラマよりも多額の予算をかけて制作されている現在の配信ドラマ。VFXのクオリティーやセットの豪華さ、撮影期間などでは、地上波は太刀打ちできない。地上波ではありえない1話1億円といわれる大きな予算をかけたTBS系日曜劇場『VIVANT』も、地上波ドラマとしては異色だったが、Netflixなどで配信されているスパイアクション系ドラマに比べるとかなり見劣りする、というのが実際の評価だった。
地上波ドラマが、アクションものやサスペンスもので配信ドラマのクオリティーを発揮するのはほぼ不可能だ。しかし恋愛ドラマであれば、大きな予算をかけずとも、脚本次第では高く評価される作品を制作することが可能になる。そこで、フジテレビが配信作品としてヒットした恋愛ドラマである『First Love 初恋』にヒントを得て、月9をその路線に進めていったとしても不思議ではない。
さらに、小説や漫画を原作にするのではなく、“名曲”から着想を得るという点のメリットもある。小説・漫画の実写ドラマの場合、その原作のファンを少なからず意識しなくてはならないのは言うまでもなく、内容次第では原作ファンからバッシングされるリスクもある。逆に、「原作を知らないから、別に見る必要がないな」と、“非原作ファン”から避けられてしまうケースもあるのだ。
一方の“名曲モチーフ”であれば、あくまでもオリジナルストーリーとなるので、楽曲とのギャップはある程度許容される。そして、小説や漫画に比べれば、その楽曲自体を知っている人も多く、ドラマを見る前にその楽曲を聞けば“原作に触れた”ことにもなるので、間口が広い。より幅広い層へと向けられる地上波ドラマにおいては、“名曲モチーフ”は手軽でリスクの低い手法なのだ。