海外の国々ではキャッシュレス化が進んでいますが日本ではまだ現金派が多いのが実情です。しかしキャッシュレス化は世界的な潮流ですから、日本でもキャッシュレスが浸透していくことが予想されています。そもそもなぜキャッシュレス化が必要なのでしょうか?またキャッシュレス社会になることで、どのような変化が日本に訪れるのでしょうか?今回の記事では、そんなキャッシュレス社会の現状と未来を探っていきます。
日本におけるキャッシュレス化の現状
日本国内ではどの程度キャッシュレス化が進んでいるのでしょうか。経済産業省が2020年1月に発表した「キャッシュレスの現状及び意義」によると2016年における日本のキャッシュレス決済比率は19.9%でした。では、世界のキャッシュレス決済比率はどうなっているでしょうか。
国名 | キャッシュレス決済比率(2016年) |
---|---|
韓国 | 96.4% |
イギリス | 68.6% |
中国 | 65.8% |
オーストラリア | 58.2% |
カナダ | 56.3% |
スウェーデン | 51.5% |
米国 | 46.0% |
フランス | 40.7% |
インド | 34.8% |
日本 | 19.9% |
ドイツ | 15.6% |
2020年 経済産業省「キャッシュレスの現状及び意義」
韓国(96.4%)やイギリス(68.6%)、中国(65.8%)、オーストラリア(58.2%)など諸外国と比べ日本のキャッシュレス比率は圧倒的に低いことが分かります。ただキャッシュレス決済を一度も経験したことがない人は少ないのではないでしょうか。
2020年1月に発表されたゼネラルリサーチ株式会社の調査によるとクレジットカードのほかICカード(Suica・PASMOなど)、PayPay(ペイペイ)など「過去にキャッシュレス決済を利用したことがある」と答えた人は全体の82.8%にものぼりました。
こうした傾向は、2019年10月の消費税率引き上げにともなう「キャッシュレス・ポイント還元事業」を政府が実施するなど、国を挙げてキャッシュレス社会を推し進めていることも背景にあります。経済産業省はキャッシュレスでの決済比率を2025年までに40%程度、将来的には80%まで伸ばす予定でいます。
なぜキャッシュレス化が必要なの?
2017年に野村総合研究所が行った「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によると、現金決済を維持するために必要な直接コストは、印刷や輸送、ATM費用、店頭設備、人件費だけで年間1兆円を超えています。
また2018年にみずほファイナンシャルグループが公表した「キャッシュレス社会の実現に向けた取組み」によると、現金の取り扱いに伴う社会的コストは、金融業界における現金管理、ATM網の運用コストだけで約2兆円でした。
さらには小売・外食産業における現金取扱業務の人件費が約6兆円で、現金決済を維持する社会的コストは莫大です。しかしキャッシュレス社会になればこの負担を軽減することが期待できます。
そのほか、キャッシュレス社会が浸透していくことでどのようなメリットがあるのでしょうか?経済産業省は、主に以下3つをキャッシュレス化のメリットとして挙げています。
- 消費者の利便性の向上
- 店舗の効率化
- データの利活用
1.消費者の利便性の向上
消費者にとっては「現金よりもキャッシュレス決済のほうが便利」という一面があります。お金を持ち歩く必要がなくなるだけでなく、消費履歴がデータとして残るため家計簿をつけることも簡単です。
2.店舗の効率化
キャッシュレス決済を導入することで店舗の事務効率化や売上拡大が期待できることもメリットの一つです。例えばレジ締めをはじめとした現金を管理する作業の負担が減るほか、そこにさかれる人件費も軽減できます。
3.データの利活用
キャッシュレス決済であれば「消費者の消費行動がデータとして記録される」というメリットもあります。例えば「消費情報をマーケティングに活用する」「個別の消費者の興味関心に沿ったサービスを提供できる」などが行えるでしょう。
消費者の動向をいち早くキャッチすることでターゲット層に合致した新たな商品開発を手がけることもできるのです。