◆故・三浦春馬との撮影秘話

映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』
©2023映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』製作委員会
――『PLAY!』を観ていると、映画そのものについて考えさせられました。映画(シネマ)がもともと意味するのは、運動と記録。本作の達郎と翔太の自転車の走行はもちろんですが、特に如実だったのが三浦春馬さん主演の『奈緒子』(2008年)です。三浦さん扮する駅伝のランナーがアスファルトを蹴る音。前走者をぐんぐん抜いていこうとする息の荒さ……。監督はどんな思い入れがありますか?

古厩:『奈緒子』はまだフィルムで撮影している作品です。フィルム撮影はお金がかかるので、むやみやたらとカメラを回せません。だから演出部の僕らは、「このテイクで決めるんだ!」と思って、撮影部と車に乗りました。

普通に走ると早く走っているように見えないので、俳優さんたちにはほんとうの選手よりもスピードを上げて走ってもらいました。一度カットをかけると、倒れて30分動けない。つらいことをさせているわけですから、「やばいやばい、次こそは」と焦るこちらも傍観者ではいられなくなります。

春馬くんと一緒に走ってるような気持ちです。その運動体の中にわぁっと入っていく感覚だったから、まさに運動感みなぎる画面になったのかなと思います。

――三浦さんの中にも自分がどんどん運動体そのものになっていく感覚はあったんでしょうか?

古厩:春馬くんにはあったと思います。芝居とはいえ、誰よりも足が早い役だから、誰よりも早く走らないといけないと思ってやるんですよね。ライバル役の綾野剛くんは、実際に中学、高校と800m岐阜県代表だったので、走り方がめちゃくちゃ綺麗。それで春馬くんは、走り方を教わって、綾野くんより早く走ろうと競っていました。