どしゃぶりの雨の中、走り去っていくまひろの姿を、打毬競技の助っ人要員として連れてこられていた直秀(毎熊克哉さん)だけが見つけ、苦い表情でしたね。一方、道長は、直秀の腕の傷痕を見て、彼の正体が大内裏に侵入した盗賊だったことに気づいて言葉を失っていました。

 平安時代の貴族たちがもっとも嫌ったのが雨天で、少女マンガのヒロインのように泣きながら雨の中を走り去るムーブなどはもってのほか、御法度でした。これはエチケットの問題というより、彼らの装束が水に弱い素材だからです。

 現代でも、某D.C.ブランドのスーツやドレスはクリーニングして何度も着ることを想定した作りではないという話を小耳に挟むことがありますが、それと同様に、平安時代の装束は高価なのに洗濯が難しいため、汚れたら廃棄するしかなかったんですね。貴族たちは雨だけでなく、雪も大変に嫌がりました。しかし、あえてそんな日に濡れることも厭わず、女性のところに通えば、本気度を示すこともできたわけですが……。

 さて、話をドラマに戻すと、まひろは着替え中の道長の声は聞いていないはずなのに落ち込み、彼から好意をほのめかされた歌が書かれた手紙を燃やす姿で前回は終わってしまいました。次回は、道長の父・兼家(段田安則さん)が急病で倒れるようです。

 前回・第7回も藤原道綱母――ドラマでは財前直見さん演じる寧子(やすこ)の隣で悪夢にうなされた時、兼家が烏帽子を被ったままで寝床にいたので「あれっ」と思った方もおられるでしょう。

 冒頭の花山天皇は「無帽」でしたが、当時の上流階級の男性は寝ている時でさえ、素顔ならぬ「素頭」でいることは厳禁で、生活のすべてに高い格式が求められる天皇には就寝時用の冠までありました。