「逆、逆、逆!」すかさず川島が割り込んでくる。

 このとき通訳さんは、これまでのようにジョンヒョプに耳打ちするのではなく、スタジオに向けて訳を伝えている。これは「韓国語が聞こえたから訳さなきゃ」と「でも韓国語だからジョンヒョプには伝わってるよね」という状況が同時に訪れたことで、反射的にハッキリと発声している。通訳さんにとっては自分の仕事を全うしただけだが、この発声がコント的にいえば「ボケを張る」ことになってしまった。盛田の演出によって極限まで緊張感が高まったシーンで、絶対にボケるはずのない人がボケているのだ。

 盛田のアドリブと通訳さんの職能によって、誰も想定してなかった「緊張と緩和」が生じた。これが最初の爆発だった。

「誰や、いつ仕込んだこれ!」川島が声を荒げる。楽しいときの川島だ。

 そして、スタジオが爆笑に包まれる中、盛田は表情を崩さない。今の盛田は「イメージダイブ」の専門家であって、偶発的に発生した新喜劇のような状況に笑ってはいけない立場だ。ここで盛田が緊張感を保ったことで、容易に空気がリセットされることになる。