航空機の追跡データによると、カサブランカからモスクワに向かって飛んだRSD392便は、緊急着陸したミネラリヌイエ・ボードゥイ付近の上空を一度通過し、北に約520キロ飛んでいた。そこからUターンするようにミネラリヌイエ・ボードゥイに向かった。

 緊急着陸を決めて進路を変えたのは、100万人都市であるボルゴグラードから南に120キロほどの上空だ。人口7万人ほどのミネラリヌイエ・ボードゥイと比べて、どちらの医療体制が充実しているかは一目瞭然だが、RSD392便はボルゴグラードではなく、遠くて、小さな都市を選んだ。

 ミネラリヌイエ・ボードゥイに緊急着陸したのは現地時間の20日午後10時40分。その頃ボルゴグラード周辺は曇りで、天候が荒れているということはなかった。

 死亡したクチェレンコ次官の妻は、ロシアで有名な目の不自由なシンガー・ソングライター、ディアナ・グルツカヤさん(44)だ。2人の間には15歳の長男がいる。グルツカヤさんは、ロシアが親ロシア系住民を守る目的で軍を送り込み、その後、一方的に独立を承認したジョージアのアブハジア出身。ソ連崩壊に伴う地域紛争に巻き込まれ、家族と共に難民キャンプ暮らしを余儀なくされ、その後、ロシアに移住した。