万太郎(神木隆之介)が植物採集に行かない日の朝。こんにゃく入りの狸汁とお揚げの入った狐汁、どちらのお味噌汁が好き?と、「私たち、どうでもいいこと話してますね」と笑いあう幸せな夫婦の会話で始まった第15週。

 けれどすぐに万太郎から寿恵子(浜辺美波)に「どうでもよくないほうの話」が切り出される。学歴がない万太郎が学者として認めてもらうためには本を出すしかない。その最初の1冊目をとうとう手がけることに。ここから八犬伝方式の始まり、と思ったら、石版印刷が評判となった大畑印刷所は忙しく、万太郎が泊まり込んだとしても、夜も印刷機の空きがない。そこでまさかの寿恵子からの「石版印刷機を買って家で印刷する」提案。つまり、同人誌を何年も何冊も作りたいから、家を印刷所にするみたいなすごい話ですよね。ついさっき、「身の丈に合わねえ望みは、不幸になる」と、長屋の福治(池田鉄洋)からアドバイスされたところなのに……寿恵ちゃん、身の丈と書かれた壁をライダーキックで蹴り飛ばして進むみたいなところ、ありますよね。「どうしてもやりたいんじゃ!」とわがままを言う万太郎と、それを「やりましょう!」と力づくで実現していく寿恵子、これは最強の夫婦なのでは。

 しかし、峰屋からもらった1000円を印刷機に使ったら、ふたりは本当に後がない。万太郎には学歴も肩書きもない、家にはもうお金もない……でも、その代わりに、応援してくれる「人」が周りにたくさんいる。印刷機を入れるために長屋の「情緒的に惜しい穴(by波多野)」の壁をぶち抜き、大きな一部屋にしてくれる長屋の人々、苦労してきた分だけ、優しくて頼もしい。そして、版元に払う100円がない万太郎の元へ、100円を持ってくる倉木(大東駿介)。かつて、倉木が盗んだ草花を無傷で返してもらう代わりに万太郎が渡したお金が、あの日の包みもそのままで! 万太郎の言葉に救われた倉木はまた真面目に働くようになり、お金に手をつけていなかったんですね。返す時をずっと待っていたのかなあ。背中の傷を恥じていたような彼が、上半身裸になり、万太郎のためにひさしを作るシーンもよかった。