一方、武蔵は大河の語る“裕子の罪”を突き止めた。医者である裕子が「大河の姉・百花(楠木杏)の命を救えなかった」ことが発覚。コネのある他のオペを外科部長が優先したことが原因で、裕子に責任があるわけではないことも大河は理解していた。しかし、大河は裕子の罪を「権力者に飼い慣らされたこと」だとし、いずれは罪を償わせるとしながらも裕子を解放し、武蔵は間一髪のところで妻の命を救ったのだ。権力者に飼いならされていたのは裕子だけではないだけに、序盤から現在にかけて追いかけまわされた裕子がなんとも不憫に思える結末だった。

 そして、これまで明かされていなかった「獣」のラストメンバーが警察側にいた。KSBC情報分析官・岩槻(白石聖)が「犬」だったのだ。物語中盤でさくらの所持品に「犬」のマスクが忍ばせられる出来事があったことから、警察内に「獣」がいると予想されていた。なかでも、常時パソコンを操作できる立場で「獣」との連絡が容易な白石に関しては以前から視聴者の間で「犬」と疑われてきた。ただ、悪として生きるに至った経緯は不明であり、第9話の見どころになることは間違いない。

 岩槻が警察指揮本部を占拠する一方、「獣」のリーダー・悠月(高橋メアリージュン)は武蔵の姉である二葉(奥貫薫)を問い詰める。「武蔵の兄・健一の失踪の真実を話せ」。やはり「山猫」は視聴者が注目する二葉なのか、それとも失踪中の健一なのか。はたまた指揮本部にさらなる黒幕がいるのか……。主要キャストは出尽くしているので、役者の格を考えても二葉が本命としか思えないのだが、それではひねりがないというかミスリードという印象も拭えない。兄となると伏線がゼロのため、大物俳優を誰かしら登場させてお茶を濁すというのもアリだがミステリーとしては今一つの結末だろう。

 武蔵の側で行動する刑事・本庄(瀧内公美)も怪しくなさすぎて怪しいところではある。さくらも物語序盤で一時「獣」の疑いをかけられたが無実に終わった流れがある。警察内部にこれだけ裏切り者がいるなら、指揮本部自体が乗っ取られていても不思議ではない。