◆山田裕貴にどんどん興味が湧いてくる場面

『ペンディングトレイン』より© TBS
 萱島直哉のこうした魅力、理由は、本作の脚本家である金子ありさのキャラクター造形にある。

 ゴールデンプライム帯連ドラ初主演の山田裕貴が演じる役柄だ。山田を大舞台に立たせるため、脚本家としての相当な力の入れようと試行錯誤を感じる。

 創造されたキャラクターは、一貫した葛藤を持ち、シンプルで線的な性格。エモーションが高まることでこの性格設定が強調され、すごく鮮やかに映る。

 いい脚本を得た山田は、いい演技で応じる。それどころか、百人力で、唯一無二の魅力をにじませている。どの場面でも役柄を深く理解した複雑な心情を浮かび上がらせているが、特に第5話は、素晴らしかった。

 全員で力を合わせ、創意工夫のすえに露天風呂を完成させる。乗客たちが順番に汗を流したあと、直哉は、星空を眺めながら、お湯に浸かる。意外とロマンチストでもある。

 山田裕貴が入浴する。単なるサービスショットかと思いきや、どっこい、全然違う。風呂の水面に反射した月明りに照らされ、うっすら縁取られる星夜の表情に息を呑む。

 なんだろ、この麗しさ。山田裕貴という俳優になんだかどんどん興味が湧いてくる。すごく不思議な場面だった。