初回から「桶狭間の戦い」を描くということは、生母・於大の方と生き別れた3歳から、6歳以降の人質生活、瀬名姫との出会いと結婚、さらに一人の武将として軍功を挙げ始める10代後半までが一気に描かれる、あるいは大胆に省略されるということでしょう。若い人向けのドラマではよく見られる手法ですが、大河の“主要顧客層”である年配の方には、はたして受け入れられるのでしょうか。

 いきなり「桶狭間の戦い」を扱うといっても、さすがに初回で、織田信長に奇襲され、今川義元が討ち取られるまでを(少なくとも具体的には)描ききるわけではないでしょう。織田軍に包囲されてしまっている味方の城・大高城(おおだかじょう)に、「兵糧を運び込め!」とのムチャぶりすぎる命令を受けてしまった家康が、「どうする」と悩んだあげく、アイデアをめぐらせ、なんとか兵糧を運び込むことに成功するというあたりまでが描かれるのでしょうか。

 このとき、彼がまとっていたとされるのが、ドラマの予告編でも存在感のある、若き日の家康を象徴する鎧「金陀美具足(きんだみぐそく)」です。

 ドラマの家康は今川家の人質生活におおむね満足しているようで、「金陀美具足」の黄金の輝きは、家康が過ごした幸せな日々の象徴なのかもしれません。しかし、家康の公式伝『東照宮御実紀』(以下、御実紀)によると、彼の人質生活は「険阻艱難(けんそかんなん、非常に険しい苦悩という意味)」そのものだったとか。