オリンピックメダリストは生きづらい――代表的な“被害者”は吉田沙保里
本連載で何回か書いているが、大物芸能人の二世タレントというのは、実はとても生きづらいのではないか。確かに金銭的には恵まれているだろう。交友関係も華やかで、人脈もあるはずだ。普通の人より芸能界デビューすることも簡単かもしれないが、親の地位は人気を保証しない。宇多田ヒカルのように、親(歌手の故・藤圭子さん)をしのぐ二世はごくわずかで、その多くはバラエテイ番組に出ても、親のネタばかり要求されるなど、親の“添え物”扱いを甘んじて受けなければならない。
同様にオリンピックのメダリストも、その後の人生に生きづらさを感じているのかもしれないと思うことがある。日本人選手が世界のトップに立ったとき、国民は熱狂し、メディアは選手を神格化する。親でも特に母親の教育法は“完璧”と称賛され、講演会や専門とする競技の教室などビジネス展開することも珍しくない。しかし、ひとたび“何か”があると、メダリストやその家族は、一気に叩かれまくる傾向があると思う。
代表的な“被害者”は、アテネ、北京、ロンドンオリンピックで金メダルを獲得し、「霊長類最強女子」といわれた元レスリング選手・吉田沙保里。2012年に国民栄誉賞を受賞した際、振袖で金屏風の前に立った彼女を、メディアも一般人も「きれい」「かわいい」と褒めそやした。抜群の知名度と好感度で、彼女のことを悪く言う人は誰もいなかったと記憶している。
その風向きが変わったのは、19年。現役を引退し、バラエテイ番組に進出しだしたときだったのではないか。「服装が似合っていない」に始まり、「(旧)ジャニーズ事務所のタレントとべたべたしすぎ」「番組での進行がヘタ」など、散々な言われ方をされるようになる。オリンピック選手から、元オリンピック選手になった途端、まるで魔法が解けたように、テレビのおもちゃにされ、ネット上で攻撃のターゲットにされるようになったと思えてならないのだ。