2017年に行動経済学の権威であるリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞しました。これをきっかけに、マーケティング分野への応用など行動経済学が注目を集めています。

行動経済学の理論のひとつに「サンクコスト」という言葉があります。サンクコストは人の合理的ではない考え方の1つ。サンクコストの概要と、その活かし方を簡単に学んでみましょう。

サンク=沈んだ 既に手から離れた(つぎ込んだ)コスト

サンクコストとは“既に手から離れた費用”を意味します。

本来はもう関係ない費用なのに、その後の行動にも影響を与えてしまう、分かりやすく言えば損をしてしまう効果があると考えられています。

もう少し具体的に考えてましょう。

もらったチケット 自分で買ったチケット 大雨でも行きたくなるのは?

見出しのクイズを考えてみましょう。直感的に「自分で買ったチケット」の方が行きたくなったのではないでしょうか。チケットに違いはないにも関わらず、「自分のお金で買った」ことを重視して判断したと思います。

サンクコストは以下のようなケースでも働いていると考えられます。

①元を取るため、食べ放題で満腹以上に食べてしまう
②安く航空券を買えたので、その分旅行先でたくさん買い物をする

①のケースでは料金を取り戻そうと健康をリスクにさらしており、②のケースではせっかく安く抑えた効果を失おうとしています。本来は、どちらも必要な量にとどめておくべきです。

サンクコストの活かし方

サンクコストは「自分を動かす場合」と「相手を動かす場合」に分け、以下のように活用してみてはいかがでしょうか。

  • 自分を動かす場合:既に支払ったコストを忘れ、未来の利益で判断
  • 相手を動かしたい場合:既に支払ったコストに意識を向けさせる

自分を動かす場合、サンクコストをいったん忘れ「どうすれば自分の利益が最大になるか」を冷静に考えることが大切です。直感で衝動的に行動しないようにしましょう。

相手を動かしたい場合、その方のサンクコストを意識させるよう問いかけてみてはいかがでしょうか。金額や時間、また努力など、その方が費やしてきたコストを連想させる問いかけが効果的です。

 
文・若山卓也
肩書・ファイナンシャルプランナー
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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