今までに「保険料、結構払ってるけどもったいない気がする」と思ったことがある方もいるでしょう。思い切って保険を全部解約してしまうのも1つの選択肢ですが、なかには解約してから後悔してしまう方もいます。Mさんの例を見てみましょう。

保険料は無駄!?思い切って全部解約して後悔……

生命保険料として夫婦で毎月5万円以上支払っていたMさん。20年近く加入してきたものの、幸い2人ともずっと健康で入院も手術も縁がなかったため「絶対に元を取れない。保険料は無駄だ」と感じていました。

「健康保険や遺族年金もあるし、ある程度貯金があれば乗り切れるだろう」という思いもあり、家計を一斉に見直して整理しようと決めたタイミングで、加入していた生命保険や医療保険を思い切ってすべて解約しました。

そのときはすっきりして家計も大幅に節約でき満足していたMさんでしたが、数年後、ガンが発覚して医療費の負担が気になる事態に。

保険を解約したときは「健康保険と貯金でなんとかなりそうだ」と考えていましたが、そのときの貯金は思いのほかお金がかかった長男の教育費として消えてしまっていて、「それまで保険料に充てていた分は貯金に回す」と決めていたルールもうまく実行できていませんでした。

日々の忙しさや目の前の出費に気を取られて、もしものときの備えが必要なこと、保険を全部解約したこと、貯金が不足していることに意識を向けられていなかったのです。

病気が発覚してしまってからは、新しい保険に加入することもできず、保険を解約していなければ受け取れていたはずの保険金額を思い出しては後悔しています。

まだ健康でいる妻の保険を検討しても、若い頃に入った保険より手薄な内容なのに保険料は高く、過去に節約のために取った行動が、結果的に家計を苦しめることになってしまっている状態です。

保険の全部解約はアリ!ただし……

生命保険や医療保険は必ず入らなければならないものではありませんし、自分の貯蓄などで充分まかなえるのであれば全部解約するというのも1つの選択肢です。

実際にそうしている人もいますし、その後に病気になっても後悔していない人も特に困っていない人もいます。Mさんのような後悔を防ぐポイントは以下のとおりです。

必要な保障分の貯蓄があるか確認

もしもの事態にはいくらくらいのお金がかかるのか、健康保険や遺族年金など公的な保障だけでどこまでカバーできるのか、もしものときに医療費に充てられる貯蓄はいくらあるのか。なんとなくではなく具体的な数字として知っておくと、決断に納得感が生まれ後悔しにくくなります。

今の保険内容を確実に把握する

加入している保険はどんなときにいくら受け取れるのか、どんな契約内容になっているのかも把握しておきましょう。節約したいだけなら、もしかしたら解約までしなくても特約を削除する、保険金額を下げる、払い済み保険にするなど別の方法でも対応可能かもしれません。

また、いわゆる「貯蓄型」と言われるタイプの保険のように、途中で解約すると損になる(支払った保険料より受け取れる解約返戻金の方が少なくなる)ものもありますので要注意です。

保険を見直すときは新しい保険が有効になってから解約する

「保険を見直したい」と思ったら、まず取るべき行動は「解約」ではありません。先述の2つの過程を経てまず現状を把握して、他社の保険など別の選択肢などとも比較して、本当に不要な状態になってから、最後に解約です。

今の保険をやめて別の保険に入るときも、きちんと新しい保険が有効になるタイミングを把握して、確実に次の保障がスタートしてから解約するようにしましょう。

保険の解約は後悔がないよう慎重に

生命保険や医療保険は一度解約すると、あとで「同じ条件でもう一度加入したい」と思っても、年齢が上がっていたり病気発覚後だったり保険の内容が微妙に変わっていたりして、できない場合も多いです。解約するときは、その契約内容や自分の置かれている状況を正確に把握して、解約しても問題ない、後悔しないことが確実になってからにするのが理想的です。

文・ばばえりFP事務所代表)
関西学院大学商学部卒業後、銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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