転職前トラブル(3) 有給休暇が余っているのに使えない

残っていた有給休暇の消化も、退職時に発生しがちなトラブルの一つだ。まず、有給休暇の取得権利についておさらいする。

年次有給休暇については、労働基準法第39条の第1項と第2項で定められている。第1項では「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められている。第2項ではその後の有給日数について細かく定められている。

有給休暇は基本的に労働者側の都合で取得することが可能だ。そのため、退職時にも労働者側の都合で有給休暇を使うことができる。通常時においては、雇用者側は労働者側が指定した有給休暇の期間を変更できる「時季変更権」を行使できることもあるが、退職時には適用することは難しいと解釈されるため、労働者の権利として有給休暇を使うことに問題はない。

一方で、例えば3週間後の退職を申し出て、その日以後3週間は丸々有給休暇の消化にあてて会社に出社しないなどというの場合は、トラブルに発展しやすい。後任者への引き継ぎや退職に伴う手続きなどを雇用側と労働者側で一緒に進めていくことが難しくなることや、そもそも急すぎるためあらかじめ社内で決めていた業務スケジュールが適切に遂行できなくなることもあるからだ。

もちろん心身の不調などに伴う有給休暇の所得は当然のことだが、なるべくトラブルに発展させないためにも、有給休暇が多めに残っている場合は早めに退職時期について上司に相談しておくことが賢明だろう。

転職後のトラブル(1) 転職先の企業文化に適応できない

転職後に最も起こりがちなトラブルの一つが、転職先の企業文化になかなか適応できないというケースだ。企業によって企業文化は異なる。体育会系な企業もあれば、社員の主体性を大切にする企業もある。転職前の企業と転職後の企業で、企業文化が異なることは当然考えられる。

こうした悩みを抱えた場合はどうすれば良いだろうか。ケースバイケースではあるが、本人が自ら転職先の企業文化に慣れていく努力をしていくことも求められる。そしてある程度の時間が経てば、いつの間にかその企業の一員として溶け込んでいることもあるだろう。

上司や同世代の同僚などに相談してみるのも一つの手だ。しかしその場合、最初からその会社の企業文化を頭ごなしに批判するのではなく、溶け込むためにはどうすればいいかなどを真摯に聞く姿勢も必要だろう。その方が相談された人も親身になって話を聞きやすいはずだ。

例えば新入社員として1社目の会社に就職し、3年後にその会社を退職して転職をしたとする。その場合、社会人としては3年目だが、新たな職場となった転職先では入社1年目の新入社員だ。あまりそれまでの経験を引きずらずに、ゼロからスタートする気持ちで先輩社員などにアドバイスを求めることも重要であると言えよう。

一方で「これはこうした方が良い」「企業文化を変えるべきだ」という意見を持つことは決して悪いことではない。企業にとっては「物言う社員」が必要とされるシーンも多々あるからだ。しかし転職してすぐは実績もないし、信頼もない。ただ言うだけでは、相手もなかなか聞く耳を持ってくれないし、それよりもまずその会社の業務全体をしっかり理解することが重要あると言えるだろう。