一生懸命取り組んでも、うまくいかないことは往々にしてある。

ベンチャー企業の中でふらふら転職を繰り返してきた私。歳を重ねると、スキルの有無に関わらず、炎上プロジェクトに鎮火要員として送り込まれたりする。

「経験があるんだから、チームをどうにかして!」

社長が悲鳴にも似た声で依頼してきたのは、年長の男性がリーダーを努め、それ以外は入社したての新卒のエンジニアとディレクターから成る、今にも崩れそうなチームの立て直しだった。

その会社に入って数日で、私はそのチームのマネージャーになった。

『PRIME』より引用
(画像=『PRIME』より引用)

私はそのチームが作っている製品が好きだったし、もっと多くの人に使って欲しいと心から思えた。だから、うまくチームがワークするようにしていきたい。そう思っていた。

とはいえ、入社したばかりの私は、商材についても、メンバーについても、わからないことだらけ。社内外から情報をかき集めながら、自分なりに頭をフル回転させていた。

でも、私の未熟なスキルでは、全然結果はついてこない。焦って頭が働かなくなり、半年ほど経つと、何をどうしていいのかを冷静に考えることができなくなっていた。

そんな中、新しいメンバーが入ってきた。最先端の大企業で、たくさんの経験を積んだデザイナーだ。

彼女は、チームの問題点を瞬時に見つけ、いろんなフレームワークを駆使し、論点を整理し、メンバーの目線を少しずつ揃えていった。

それまでリーダー然と振る舞っていた私は、その流れで何も役に立つことはできなかった。 デザイナーの彼女は、私のリーダーシップをサポートしてくれる形で、様々な提案を進めてくれたが、私は自信をなくしていたし、今まで自分が引っ張ってきたつもりのメンバーからの「あいつ使えなかったよな」の目線(←完全なる妄想)に耐えられなくなって、毎日気持ちが押しつぶされそうになりながら、出勤していた。

この製品を良くしたい、自分では力不足、そんな時に経験豊富なメンバーが入ってきてくれた。 これは心から喜ぶべきことなのに。とにかく毎日が辛く苦しかった。

『PRIME』より引用
(画像=『PRIME』より引用)

なぜそんなに苦しかったのか。

その理由を今振り返ると、製品を良くしたいという思いよりも、自分のプライドを守りたいという思いが強かったからだと思う。

結果を出せなかった自分をメンバーがどう思っているか。そんなことよりも、今からその製品をどうしていくかの方が圧倒的に大事。

そのことに気づくのに、そう時間はかからなかった。

でも、無駄なプライドに気づいても、それを自ら脱ぎ捨てることは簡単ではなかった。いつも、重たい心と戦いながら出勤して、苦しみながらたくさんの打ち合わせを重ねた。

ある日、デザイナーの彼女と2人でランチに行くことになった。気持ちが重く、当時夜もよく眠れていなかった私は、重たい頭を抱えながら、その会社の定番のランチスポットに向かった。食べログで高評価の近所の中華屋さんだ。

そこでいつも食べる、大好きな中華丼を頼む。

待っている間は、仕事の話をするかと思いきや、彼女の飼っている猫の話や私の好きなお笑い芸人の話などで盛り上がった。