「新聞用紙」は25%も減少

日本製紙連合会のデータによると、紙・板紙(段ボール等)市場を合わせた国内の生産量は2000年の3182万トンから2017年には2651万トンと17%減少した。国内生産はリーマン・ショック後の2009年に大きく数量を落とし、その後も回復できない状態が続いている。

内訳をみると板紙の生産は2000年の1279万トンから2017年には1193万トンと7%減少、全体の落ち込み(17%減少)からするとむしろ底堅いといえるかもしれないが、これはEC(電子商取引)の拡大による段ボール市場(板紙)が活性化しているためと見られる。実際、段ボール原紙は2000年の967万トンから2017年の968万トンとほぼ横ばいである。一方で、紙市場は2000年の1903万トンから2017年の1458万トンと23%減少した。一口に紙といってもティッシュやトイレットペーパーなどの衛生用紙の需要は、2000年の173万トンから2017年には178万トンまで増加している。落ち込みが著しいのは「印刷・情報用紙」の30%減、「新聞用紙」の25%減なのだ。

こうしてみると、30年後には衛生用紙、段ボール、包装用紙以外の紙はほとんど見かけることはなくなっているのかもしれない。

株式市場で「失望売り」を誘発する

先に述べた通り、日本製紙は製紙業界で国内2位、板紙では国内首位の企業だ。同社は1949年に過度経済力集中排除法により旧王子製紙を3社に分割した十條製紙が前身となる。その後、1993年に山陽国策パルプと合併し、2001年には大昭和製紙等との吸収合併のために一時上場廃止、2013年には日本製紙として再上場を果たしている。日本製紙は王子ホールディングス <3861> とともに日本の製紙業の歴史そのものといえる会社なのだ。

しかし、合併を繰り返しているにもかかわらず、肝心の紙市場が縮小しているため売上では2008年3月期、営業利益では2005年3月期に過去最高を記録したあとは更新することもなくなっている。そうした状況の中、日本製紙は印刷用紙、新聞用紙など主力とする生産を13%削減するリストラを発表した。北海道の釧路や苫小牧の製紙ライン8台を停止し、53万トンの生産能力を削減する。同社は秋田工場のライン削減も決めているが、生産能力の削減としては7年ぶりの大がかりなものとなる。

工場の停止で今期は約200億円の特別損失を計上。今期予想の最終利益は「180億円の赤字」となる見通しだ。また、年間配当を30円減配の30円としたことも株式市場で失望売りを誘発することとなった。

「デジタル・オア・ダイ」の二極分化は始まったばかり?

日本製紙は先の生産設備削減と同時に「第6次中期経営計画(2018~2020年度)」を公開している。それによると、前2018年3月期実績の営業利益176億円を2021年3月期には470億円に増やす計画だ。同社はその計画を推進するために「既存事業の競争力強化」「事業構造転換」及び「成長分野の事業拡大と新規事業の早期戦力化」を基本方針に掲げている。事業構造の転換で生産ラインを削減していくとともにパッケージや家庭紙・ヘルスケア、ケミカル、エネルギーを成長分野として注力する方針だ。

いまや製紙産業やメガバンクのような日本経済の成長を支えてきた業種でさえ、デジタル化の大きな波のなかで過去の遺産を捨て「新テクノロジー」へのコミットなしでは成長が見込めない時代になった。果たして「30年後」には用紙やお札も消滅することになるのだろうか。一つだけ確実にいえるのは、5年前に孫氏が語った未来予測「デジタル・オア・ダイ」の二極分化はまだ始まったばかりということだ。

(ZUU online編集部)

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