「え? (水田は)先輩やけど、和牛じゃなくなったんやったら、もう下やろ」
この稲田のボケに、全員から総ツッコミが入る。
絶妙だった。稲ちゃんにはこれがあるのだ。顔だけの芸人ではないのだ。
和牛というコンビに最大限のリスペクトを捧げつつ、水田にツッコミしろを作る。しかも自分が暴言を吐いて悪者になることで、水田の価値そのものは下げない。和牛、アインシュタイン、アキナの3組はもう10年も「アキナ牛シュタイン」として新ネタを下ろすユニットライブを開催してきた仲だ。今回の解散も、アキナとアインシュタインだけには先に知らされていた。
番組はその後も、水田に寄り添いながらフォーカスしすぎない距離感で「和牛解散」を解きほぐしていく。
本当のところは、同期とはいえ誰もわからない。もしかしたら水田自身だって、なぜこんな結論になったのか完全には飲み込めていないのかもしれない。それでも、芸人人生は続いていく。仲間がいる。
番組後半の宴会シーンで、もう一度、稲田の「水田、和牛ちゃうねんから、もう下やろ」が発動する。実にうれしそうに破顔する水田がアップで抜かれ、メンバー全員が爆笑していた。
(文=新越谷ノリヲ)