近年、住宅ローンを借りる年齢が上がり金額も大きくなってきていることから、定年後も多額の住宅ローンを抱える家庭が増えています。何事もなく無事に完済できればいいのですが、なかには見通しが甘かったり計画が狂ったりして困ることも……。

定年を迎えても多額の住宅ローンを抱えていた老夫婦の事例

60代のKさん夫妻は、大きな決断を迫られていました。住宅ローンの支払いが難しくなり、これまで長年ローンを支払って大切にしてきた家を売りに出すかどうか、追い詰められた状況でした。

Kさんは37歳のときに35年の住宅ローンを組んで新築マンションを購入しました。返済完了予定は72歳、そのころには仕事も引退して年金生活になっているだろうとは思いましたが「うちの会社は退職金もあるし、周りもみんなそれくらいで借りているし、返済に困ることはないだろう」との判断でした。

余裕ができたら繰上げ返済をして、定年までに間に合わなければ退職金で残りを返済する。そんな計画でしたが、子どもの私大進学、思ったより早い昇給の頭打ちや役職定年、マンションの管理費・修繕積立金の値上がりなどが重なり、当初思い描いたようにはいきませんでした。

Kさんはお金の面で不安があったため60歳で定年を迎えたあとも65歳まで再雇用で働くことにしました。65歳時点でのローン残債は1,000万円まで減りましたが、退職金が思った以上に少なかったことや再雇用の収入では家計の維持が難しかったことから、貯金を切り崩してしまいます。結果、退職金と貯金は合わせて800万円まで減ってしまいました。

65歳からは年金暮らしに突入しますが、再雇用よりさらに収入が減る見込みにもかかわらず月10万円を超える住宅ローンの負担は続きます。住宅ローンの返済ができなくなると、遅延損害金が発生したり全額一括返済を求められたり、最悪の場合は家を競売にかけられてしまいます。

将来の「住宅ローン破産」や「老後破産」を防ぐためにできること

住宅ローンの返済が難しいと感じたら、できるだけ早く住宅ローンを借りている金融機関に相談するようにしましょう。返済条件の変更に応じてくれることがありますよ。

早い段階なら、条件変更以外にもローンの借り換えなども選択肢に入ります。実際に何ヵ月も滞納してからではできないことも増えてしまいます。本格的に困る前に行動しておきましょう。

競売を避けるためには、通常の売却だけでなく任意売却やリースバックといった方法もあります。これらも早い段階で検討した方が焦らずに済み、本来より安い価格であわてて手放すといった事態を避けられます。

住宅ローンを借りている人が将来返済できない状態を防ぐためには、次のようなことが有効です。

  • 退職金や今の収入をあてにしすぎない
  • 老後も働き続ける覚悟・体力・スキルを持つ
  • 生活にかかるコストを下げる
  • 繰り上げ返済や運用も検討する

どれも早く気付いて早く行動して早く対策しておくほど、あとで困りにくくなります。

住宅ローン返済に困る前に対策しておくことが大切

借り始めるときに、完済まで見据えて長期的に考えて計画的に借りるというのは当然重要です。ただ、なかなか先まで見通すのが難しいご時世ですので、計画的に借りたつもりでもうまくいかなかったということもあるでしょう。

ローン返済に困ったら、というより今後困りそうな気配があったら、早めに金融機関に相談するのがおすすめです。「どうしよう……。」と悩んでいる間に事態が悪化してしまうかもしれません。まずは事態を改善するための行動を取るようにしましょう。

 
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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