老後2,000万円問題が話題になったこともあり、2019年はとくに「貯蓄から投資へ」の風潮が強まりましたが、コロナショックの影響でこのトレンドにブレーキがかかっています。世界経済が混乱し、日経平均やNYダウの大幅下落などのニュースを見れば不安にもなるでしょう。しかし、ここで投資をやめてしまうのは、もったいない!今こそはじめたい資産運用とはなにか紐解いていきましょう。

コロナショックをきっかけに「貯蓄から投資」のトレンドにブレーキ?

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活はもちろん、経済にも大きな影響を与えました。2020年のはじめには、コロナショックによる株価暴落のニュースなども頻繁に報じられ、「貯蓄から投資へ」という近年のトレンドに変化が生まれています。

2019年のお金の動きを復習

「貯蓄から投資へ」というスローガンは、2003年にスタートした証券税制の優遇措置のもと打ち出されました。それから紆余曲折があったものの2019年には老後2,000万円問題が話題となり、「貯蓄から投資へ」のトレンドが強まりました。資産運用セミナーに足を運ぶ人が増え「iDeCo(イデコ)」や「つみたてNISA」をはじめたという人も多かったようです。

日銀が四半期ごとに発表している「日銀資金循環統計」で家計部門の資産残高を見ると、2019年の秋から冬にかけて、実際に多くの人が投資信託や株式等を購入したことがわかります。2019年10~12月の期間に金融資産全体が前年比3.5%増、投資信託や株式等も10%以上の増加となっています。

【2019年:家計の金融資産の前年比(%)】
2019年3月末 金融資産計0.6%(現預金2.0% 投資信託▲2.4% 株式等▲6.5% ほか)
2019年6月末 金融資産計▲0.1%(現預金1.9% 投資信託▲3.7% 株式等▲9.7% ほか) 
2019年9月末 金融資産計▲0.6%(現預金1.7% 投資信託▲4.6% 株式等▲10.9% ほか)
2019年12月末 金融資産計3.5%(現預金2.3% 投資信託10.9% 株式等13.7% ほか)

コロナショックで投資信託から資金が流出?

しかしここにきて投資をはじめたばかりの人たちにもコロナショックが襲うかたちとなり、せっかく始めた投資をやめ貯蓄に逆戻りする動きが出てきているようです。

【2020年:家計の金融資産の前年比(%)】
2020年3月末 金融資産計▲0.5%(現預金2.1% 投資信託▲11.7% 株式等▲11.9% ほか)

2019年12月末にプラスに転じていた投資信託と株式等が、今度は一気にマイナスに転じたことがわかります。また、同統計によると、2020年1~3月期には家計の資産項目のうち投資信託が3,684億円流出しています。

「貯蓄から投資へ」のトレンドに沿って投資をはじめたものの、コロナショックで毎日のように評価減が続くのを見て、焦って現金化する人が相次いだのかもしれません。

20代のとるべき投資戦略

せっかく投資をはじめたのに、コロナショックのせいでマイナス評価が続けば、不安になるのは当然です。だからといってすぐに現金化してしまっては、損失を確定させることになります。

マイナスとはいえ、あくまで「評価損」。評価損とは、株式などが買ったときの値段(簿価)から値下がりして、時価が低くなっているときの差額のことを言います。このときあわてて現金化せずに、評価が回復するまで「待つ姿勢」が大切です。

過去の事例をチェックしてみよう

例えば、2008年に世界的な金融危機であるリーマンショックが起きたときも株価は一時的に大暴落しました。

2008年9月にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんしたあと、日経平均株価は1万2,000円台からおよそ半年で7,000円台の安値を付けるまで暴落しています。しかし、その後は順調に回復し、1年後の2009年8月には1万円台になりました。

今回のコロナショックが日経平均株価に与えた影響を見ると、2020年1月17日に2万4,116円の高値を付けたあと、3月19日には1万6,358円の安値を付けました。しかし、その後は回復しはじめ、8月5日時点では2万2,515円とほぼ暴落前の水準に戻しています。

一時的に「評価損」が発生しても、じっくり待ち続ければ評価は回復する可能性があります。もちろんどのような場合でも回復するとの確約はありませんが、今回のコロナショックによる一時的な暴落も、時期を待てば回復する可能性があります。

損が出た時点であわてて現金化してしまうのは、初心者が最も陥りやすい投資のワナかもしれません。