「新宿二丁目の深夜食堂 前編 ~人生を奏でるビール瓶~」レビュー
りっちゃんの“地雷”に違和感

 葵のお会計の件で、りっちゃんはずいぶん葵を叱っていたように見えた。飲食店でご飯を食べ、うっかり財布にお金がなかったときに「その場にいて、また会えそうな人から金を借りて支払う」と「近所のコンビニで下ろしに行く」のどちらも問題ないように思うのだが、りっちゃん的には前者の行いは地雷だったようだ。

 番組ナレーションはこのくだりに「今時こんなふうに若いお客を叱れる店主がいるでしょうか」とコメントを付けていたが、これにも違和感があった。店主が叱る正当性は「お客が明らかな悪事をした」という前提あってのことで、今世間で騒がれている「回転寿司店で客がふざけて醤油さしを舐める」みたいな明白な迷惑行為ならともかく、葵がしたことは悪事とされることなのだろうか。

 なお、りっちゃんはその後、この件についてスタッフに「あなたが私を理解しなくてもそれはあなたの自由です」と話しており、本人としても、これは特殊な“地雷”である、という意識はあったのかもしれない。

 叱られること自体、とても気が滅入ることだが、「相手が怒っているポイントがどうにもよくわからないまま叱られ、立場的に相手のほうが強いので反論もできない」というのはつらい。何より、食事のときは叱られたくない。

 続く後編では引き際も考え始めた夫婦だが、いったい「クイン」はどうなるのか。

※初出:2023年3月21日

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月19日は「新宿二丁目の深夜食堂 後編 ~名物夫婦 53年の物語~」というテーマで放送された。