奥森の19歳という年齢をあげつらって「何も知らない少女を!」みたいな扱いをするのも、おかしな話だ。

 奥森は幼少期からモデル活動を始め、子役だったころから現在までずっと仕事をしている女優である。芸能人としては、岩井と同期にあたる。

 また、キャリアとして比較するなら、一般的な学生時代を過ごした19歳の女性ではなく、3歳でテニスを始め、14歳でプロデビューし、19歳のころには180cmの長身から200km/h近いサーブを打ち下ろしていた大坂なおみとか、そのあたりのほうがまだ近い。ジャンルは違えど、奥森はそういうキャリアを送ってきた人間である。なかなかに、私たちの理解の及ばない人生だとは考えられないだろうか。そうしたキャリアの積み重ねによって培われた価値観に、誰が何を言えるだろうか。

 それでも、このニュースを見たとき、「いろいろゴチャゴチャ言われるだろうな、岩井は大丈夫だろうけどな」と思ったことは自白しておく。「いろいろゴチャゴチャ言われる」ことを許容する社会でも仕方がないと感じたということだ。反省している。文章を世の中に発表する立場である以上は、「他人の価値観にいろいろゴチャゴチャ言っちゃダメだよ、多様性の時代だよ、そういうのは家とか居酒屋の個室だけにしといたほうがいいよ」と、ここに書き記しておきたい。そして、世界が少しでも平和になってほしい。

(文=新越谷ノリヲ)