◆PMSの悩みは友達にも話せなかった

橋さん
――なぜ社内起業をしようと思ったのですか?

橋麻依子さん(以下、橋):入社から営業を続けていたのですが4年目になった時、将来について尊敬する上司と話をした際、「マーケティングをやってみたい」と伝えたんです。

 そうしたら、「マーケティングを使って誰のどんな役に立ちたいのかがハッキリしていないと、“マーケターをやっている自分”に満足して終わってしまうよ」と指摘されました。それをきっかけに「自分はどんな人の役に立ちたいんだろう」と考えるようになりました。ちょうどそのころ、新規事業創出プログラムの募集がスタートしたんです。

――女性の心や身体の悩みに目を向けたのはなぜだったのでしょうか。

橋:自分自身が学生時代から毎月PMSがつらく「どうして周りのみんなは大丈夫そうなのに、私だけが毎月ゆらいでしまうんだろう」と悩んでいたんです。社会人になってから、ますますつらく感じるようになっていました。

 私の感覚ですが、女性に限らず働く人は「常にマックスのパフォーマンスを発揮しなくてはいけない」というプレッシャーに晒されていると思います。体調の波があることが許されない環境は苦しいと思っていました。

 そんな悩みを解決できるようなサービスにしたいというアイデアを立てていたとき、軽い気持ちでFacebookを使って「皆さんはどんなことがつらいですか?」「自分を否定してしまったことはありますか?」などのアンケートをとってみたんです。

 すると、予想以上の反響がありました。中高時代、勉強も部活も遊びも楽しんでキラキラしているように見えた周りの子たちが実は悩んでいたことが分かりました。

 女子校だったので生理用ナプキンを貸し借りするようなオープンさはあったのですが、PMSなどの悩みについて打ち明け合うことはなかったんです。

――女性同士でも、「自分だけなのかも」と悩みを抱え込んでしまうことはあるんですね。

橋:特に印象的だったのは、長年の親友がPMSに悩んでいたことでした。「実は昔からつらかった」と聞いて、お互いに隠して我慢していたんだと初めて知りました。

 もっと早く知ることができたら、自分だけがダメだと思わなくて済んだし、自分にも周りの人にももっと優しくできたんじゃないか。その思いからLaboMeの原型となる事業案を応募し、133件の中から採用されました。