たくさん勉強して、いい学校に入ることにどのような意味があるのだろう?学生の頃に誰しも一度は思い浮かべたことがある疑問でしょう。「学校の勉強は社会では役に立たない、意味がない」という人もいますが、本当にそうなのでしょうか。厚生労働省が毎年行っている「賃金構造基本統計調査」を見ると、その考えは覆されるかもしれません。学歴によって年収はどのように変化するのか、また生涯賃金の差についても調査しました。
目次
- 最新データ!2019年の学歴別初任給
- 学歴別の給与で考える、暮らしの質の差
- 学歴は生涯賃金にも大きな差が
- 年金額をシミュレートしてみよう
- 最大月7万円の差!学歴で差が出る年収を埋める方法は
- 現状よりも少し上を見て努力することが大切
最新データ!2019年の学歴別初任給
「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)」の学歴別初任給(2019年6月の賃金/男女の合計による平均)を見ると、高校卒の初任給は16万7,400円だったのに対し、高専・短大卒では18万3,900円、大学卒で21万200円、大学院修士課程修了では23万8,900円でした。
この調査だけを見ても、学歴によって初任給に大きな開きがあることが分かります。年収にすると、どの程度の差になるのでしょうか。
表1:初任給からシミュレーションした学歴別の年収と高校卒との年収差 単位:円
初任給×12ヵ月 | 高校卒との年収差 | |
---|---|---|
高校卒 | 2,008,800 | 0 |
高専・短大卒 | 2,206,800 | 198,000 |
大学卒 | 2,522,400 | 513,600 |
大学院修士課程修了 | 2,866,800 | 858,000 |
初任給と同額を1年間受け取ったと仮定して計算しました。高校卒とそのほかの学歴との年収を比べると、高専・短大卒では19万8,000円、大学卒では51万3,600円、大学院修士課程修了では85万8,000円と、年収額が大きく異なることが分かります。
20~24歳の学歴別平均年収
学歴が変わると就職する年齢が異なることを考慮し、年齢条件を合わせた平均年収を厚生労働省の2019年のデータから抽出しました。20~24歳の男女の年収を合計し年収を算出しております。
【高校卒20~24歳の平均年収】
男性:2,030,000円
女性:1,864,000円
【高専・短大卒20~24歳の平均年収】
男性:2,106,000円
女性:2,102,000円
【大学・大学院卒20~24歳の平均年収】
男性:2,292,000円
女性:2,248,000円
表2:20~24歳における学歴別の年収差
年齢 |
年収:円 | ||
高校卒 | 高専・短大卒 | 大学・大学院卒 | |
---|---|---|---|
20~24歳 | 1,947,000 | 2,104,000 | 2,270,000 |
大学・大学院卒との年収の差 | -323,000 | -166,000 | 0 |
なお、表1と表2で同じ学歴でも年収に幅があるのは、調査の対象となる事業所の規模の差によるものと考えられます。
表1の参考資料である毎月勤労統計調査は従業員が500人以上の事業所が対象。それに対し、表2の参考資料の賃金構造基本統計調査では、従業員が10人以上の事業所が調査の対象となっています。
いずれにしろ学歴による年収の差があることがわかり、大学・大学院卒と高校卒を比べると、30万円以上の差が生まれています。
学歴別の給与で考える、暮らしの質の差
このように学歴による収入差が生まれているのは事実です。収入の違いは生活の質にダイレクトに現れます。
例えば住居では、一般的に、賃貸住宅では収入の3分の1までが家賃の目安と言われています。高校卒の初任給は16万7,400円ですから、毎月の家賃の目安はおおよそ5万6,000円となります。
高専・短大卒なら6万1,300円、大学卒で約7万円、大学院修士課程修了では約8万円が、それぞれ目安となります。
同じワンルームでも、家賃が2~3万円違えば立地や条件も大きく変わってきます。初任給をもとに、毎月の家計のモデルケースを作成しました。
表3:初任給をベースにした学歴別の家計のモデルケース 単位:円
高校卒 | 高専・短大卒 | 大学卒 | 大学院修士課程修了 | |
---|---|---|---|---|
月収 | 167,400 | 183,900 | 210,200 | 238,900 |
家賃 | 55,800 | 61,300 | 70,067 | 79,633 |
水道光熱費 | 15,000 | 15,000 | 15,000 | 15,000 |
食費 | 40,000 | 40,000 | 40,000 | 40,000 |
通信費 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
保険料 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 |
日用品費 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 |
交際費 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
奨学金返済 | 0 | 17,000 | 20,000 | 30,000 |
余剰金 | 26,333 | 20,600 | 35,133 | 44,267 |
高校卒では奨学金の返済はなし、高専・短大卒以降には奨学金の返済があったとしても、高校卒と大学卒では毎月の余剰金に1万円ほどの差が出ます。仮に皆が同額の家賃の賃貸住宅に住んでいるとしたら、余剰金の差はさらに大きく開きます。
学歴は生涯賃金にも大きな差が
学歴の違いは、生涯賃金にも影響を与えます。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2019」による、退職金を含めない学歴別の生涯賃金の額を見ていきましょう。
【2017年時点の学歴別生涯賃金】
高校卒の生涯賃金
男性:2億1,140万円
女性:1億5,020万円
平均:1億8,080万円
高専・短大卒の生涯賃金
男性:2億1,550万円
女性:1億7,590万円
平均:1億9,570万円
大学・大学院卒の生涯賃金
男性:2億6,920万円
女性:2億1,670万円
平均:2億4,295万円
生涯賃金の面(男女計の平均)では、高卒と大卒でおおよそ6,000万円の差が生まれることになるようです。住宅が購入できるほどの差が出ると考えると、「学生の頃の勉強は無駄にはならない」ことが分かるでしょう。