日本人は、約8割の方が何らかの保険に加入しています。しかし、よく分からないからといって「保険会社のおすすめプラン」を鵜呑みにするのは危険です。リスク対応や老後のために保険加入したつもりが、入りすぎて家計破綻ということにもなりかねません。2つの事例をご紹介します。

事例1 Aさん夫婦の場合

年齢 40代
子供2人 7歳3歳
収入: 夫550万円 妻100万円
貯金1,200万円 
住宅ローン残1,000万円

加入保険: 
夫婦同じもの:終身保険(保険料年12万円×2)、医療保険(同6万円×2)、ガン(同6万円×2)、健康還付付きの医療保険(同5万円×2)、夫:年金保険(同12万円)
子供:学資保険(同20万円)

合計10種類 保険料合計 年 約90万円  

将来の年金が心配で貯蓄も兼ねて、夫婦で10種類の保険に加入していました。キャッシュフロー表(CF表)で調べると子育て期間に家計破綻することが分かりました。 堅実にリスク対応されているように見えますが、保険加入数が多すぎて管理しきれないので、保険は半分に減らし教育費が必要な時期に対応できるように見直しています。

年金額を試算すると、夫 厚生年金140万円+国民年金70万円 妻 厚生年金30万円+国民年金70万円 合計310万円でしたので、追加の個人年金はあまり必要ではありません。現金が必要な教育時期に余裕がなく、年金生活で余裕がでる構図になっていました。

事例2 Bさん夫婦の場合

年齢 40代
子供1人10歳
収入:夫370万円 妻 なし 
貯金2,000万円
住宅ローン残1,000万円

加入保険: がん・三大疾病・先進医療付き医療保険 (保険料年7万円)、死亡保険500万円 (同20万円)、収入保障 (同6万円)  

保険料合計 年33万円 

収入はあまり多くなく、ガン・心筋梗塞などの病気が心配で、老後の不安や何か起こった場合を考え3種類の保険に加入しています。家計は毎月10万ほどの赤字です。保険料を払っても生活はなんとか廻っているので、さらに貯蓄を兼ねた保険加入を考えていました。CF表で調べてみると、子供の教育費は無償としても子育て費用で近い将来赤字となり家計は破綻することが判明しました。

加入している死亡保険は60歳までは低解約返戻のタイプですが、解約し掛け捨てタイプに変更、医療保険は解約し低額なタイプに変更しました。

子供が学校を卒業するまでは、奥さんが働きに出るか、生活費や自家用車の節約をするか、すこしでも貯蓄を増やす必要があります。

今の生活ではなく将来の生活の計算を

共通の問題点は、今の生活がなんとか成り立っているのでこのままでいいと思い、子育て費用、老後の収支(公的年金額が分からない)をうまく計算できていないことです。CF表を作成してみれば問題点が分かります。

保険はいろいろなニーズに対応するためさまざまなタイプが売り出されていますが、貯蓄を兼ねた保険ではなく、貯蓄と保険は分けて考えるべきです。保険の必要機能は、日常生活のリスクに対し「お金」で保障すること。掛け捨てタイプが基本となり、保険料も安くなります。

個人の考え方、好き嫌いや年齢や家族関係、年収などそれぞれの事情が異なりますので、自分にあった保険を選ぶようにしましょう。

貯金で解決できない部分だけに保険をかける

日本人は保険好きで、生命保険文化センターの資料では、平均で一所帯あたり年間 約40万円、生涯で男性1,000万円 女性850万円の保険料を支払っています。

しかし、公的な社会保険は「遺族年金」「労災保険」「老齢年金」「介護保険」「健康保険」「自賠責保険」など一通り整備されています。突然のトラブルが発生しても、社会保険の保障と自分の貯蓄があれば何とかなる場合が多く、それ以上の保険は必要ないケースが多いようです。貯金では解決できない、もしくは解決したくない「経済的な痛手」に対して「保険」に頼るべきでしょう。

過不足ない保険加入を心がけて

保険に入りすぎているがために、本当にお金が必要な時に不足してしまうことは珍しくありません。保険料は長期的にかかる固定費なので、保険にお金をかけすぎるとすぐに家計はひっぱくします。不安な気持ちはわかりますが、不要なものは解約することも視野に入れてみてください。また、家族のライフステージによっても必要な保険は変わってくるので、定期的に見直しすることをおすすめします。

 
文・淺井敏次(FP事務所ASAI代表/CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビジネス法務エキスパート)
大分県知事任命「豊の国 かぼす特命大使」、京都大学卒ビール会社退職後、中立な立場で社会貢献するため、FP事務所開設。独立系FPの視点でお客様の利益最優先に提案業務にあたっています。

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