実は、こたけによる賞レースのリーガルチェックは、今回の動画で4回目。昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)では、準優勝のさや香に対しては、免許証を賽銭箱に入れた行為が「器物損壊罪」になる可能性があるという解釈を披露して失格、3位のロングコートダディは兎が堂前透との「一緒に走ろうな」という黙示的な承諾を反故にした行為が「債務不履行」にあたるとして、失格とした。一方、シンプルに悪口を連発した優勝コンビ・ウエストランドに対しては「個人を特定して誹謗中傷したわけでもなく、抽象的な個人の思いを表現していただけ」なので「憲法21条・表現の自由の範囲内」であり「一番クリーンな漫才」と評した。
また、こたけ自らが決勝まで進んだ前回の『R-1グランプリ』(フジテレビ系)、『ABCお笑いグランプリ』(朝日放送)でも、終了後にリーガルチェックを実施、どちらの大会に対しても他の出場者を法的に斬りまくり、自らを優勝者と定めている。
要するに、法律の専門知識とこじつけによる漫談なのだが、こたけは弁護士であると同時に、賞レースの決勝に勝ち上がるほどのお笑いの専門家である。ネタに対する明快な分析によって出場者を持ち上げ、法的知識で一刀両断する展開は実に爽快。さらにこの法律漫談のエッセンスとなっているのが、こたけの「熱烈なお笑いファン」という一面だ。信奉するカベポスター・永見大吾を過剰にひいきしたり、ウエストランドに対する世間の風当たりが強そうだと判断すれば、「一番クリーンだ」と擁護してみたりというバランス感覚も魅力のひとつとなっている。いずれにしろ、毎回イスに座ったままのひとりしゃべりを30分、最後まで聞かせる実力は評価されてしかるべきだろう。
「このリーガルチェックがないと賞レースが終わった気がしない」という声も上がり始めたこたけ正義感の法律漫談、今年の『M-1』後の更新も楽しみだ。
(文=新越谷ノリヲ)