集まったマスコミに紛れて署内に侵入したセイジは、エレベーターで上階へ。そのエレベーターには、ついさっきセイジを追い詰めながら取り逃がした警部補・狩宮(松本若菜)とその上司も同乗しています。上司は「これだけの包囲網の中を逃げ切れるわけない」とか言ってる。すぐ後ろにセイジがいることも知らずに!

 これ、ここまでセイジがドラマチックな知略縦横を尽くして署内に侵入していれば「ククク、実はここにいるのに」みたいな爽快感があるシーンなんですが、普通に歩いてきて普通に乗ってるので、「もしや誰もセイジが見えていないのでは?」「もしやセイジって……?」という、今度は『シックス・センス』(1999)的な90年代のハリウッドオシャレ設定SFなのかなと勘違いしちゃう。

 逃亡劇で積み重ねるべきは、「これなら逃げ切れるかも!」「ダメだ!」「じゃあこれなら逃げられる!」「やっぱダメだった!」という、逃亡側の希望が追跡側の現実によって叩き潰されていくことで絶望を煽り、最後にそれを「じゃあこれなら! よっしゃ! 逃げ切れた!」という爽快でひっくり返す展開なはずですが、『ONE DAY』は真逆なんです。「そんなことしたら捕まっちゃうよ」「あれ? 大丈夫だった。そうか大丈夫なのか」を繰り返している。緩和、緩和、緩和。緊張感がまるでない。厳しい。仕事じゃなかったら見てらんない。

 結局、セイジは目論見通り、蜜谷と捜査本部でご対面。しかも都合のいいことに2人きり。なんで捜査本部内で2人きりになれたかは、もうそういうドラマだからとしか言いようがない。

 かろうじて、江口洋介の顔面と、彼がセイジを積極的に逃がそうとしているという謎だけが、こちらの興味をつなぎとめてくれている。ありがとう、あんちゃん。そこに愛はある。