新型コロナウイルスの影響により、多くの業界で業績悪化が伝えられています。ひとつの仕事だけを続けることに不安を覚え、副業によって収入の確保を考えている人も少なくないことでしょう。そんな中、注目を集めているのが“ポートフォリオワーカー”という働き方です。本記事では、その定義を紹介しメリット・デメリットについて解説していきます。
ポートフォリオワーカーとは?
ポートフォリオワーカーは、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットによるベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社、2016年)で広く知られるようになった概念です。
同書では、仕事のステージが長期化・多様化する人生100年時代の新たな働き方として、一ヶ所に腰を落ち着けることなく幅広い進路を見据える「エクスプローラー(探検者)」、組織に属さず小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」と並んで、「ポートフォリオワーカー」が紹介されています。
簡潔に表現するなら、ポートフォリオワーカーとは複数の仕事や社会活動に同時並行的に携わる人のことです。
例えば、プログラマー、エンジニア、ライター、デザイナー、講師、コンサルタント、投資家などなど、1人の人間がさまざまな肩書きを持ち、それぞれのコミュニティと関わりながら仕事をするというスタイルのことで、雇用の流動性が高い欧米の先進国を中心にすでに確立されてきているようです。
“ポートフォリオ”とは、しばしば使われる「カメラマンやデザイナーの作品集」といった意味ではなく、「投資家がリスク管理のために分散投資する金融資産の組み合わせ」のことを指します。この場合、ポートフォリオを組むといった言い方をします。
この投資の分割(リスクヘッジ)の発想を働き方に応用した結果、ポートフォリオワーカーという概念が生まれました。
ポートフォリオワーカーのメリットとは
ポートフォリオワーカーとして働くことのメリットは、どんなことでしょうか。
第一に、さまざまな仕事を手がけることによって、社会情勢や業界ごとの好不調に左右されず収入を維持できる可能性が高いことがあげられます。
投資におけるポートフォリオと同様に、自身の労働力を資産に見立て、複数の投資先に分割してヘッジしていれば、仮にひとつの仕事が立ち行かなくなっても問題ないという考え方です。
高校・大学・専門学校などを卒業して就職した場合、当然ながらひとつの会社に自分自身のスキルと時間の大部分を投資することになります。
このたびのコロナ禍で大きな影響を受けた観光・外食産業のように、社会的な要因から事業が不調に陥ると、当然ながら失職や収入減のリスクを背負うことに。また育児や介護など、個々人の家庭の事情が、働き方とミスマッチすることも少なくありません。
ポートフォリオワーカーなら、収入が激減するリスクを回避できることに加えて、自分の生活スタイルに合った方法で自由に働き方をデザインできます。
加えて多種多様な仕事の経験値を得ることで、複数のスキルを伸ばし、それらを組み合わせて価値創出できる点も大きなメリットです。所属する会社ではあまり役立たなかった能力を、別の場所で最大限に発揮することもできるでしょう。