<前編>
NISAは運用で得た利益にかかる税金が非課税になるお得な制度で、投資初心者にもチャレンジしやすい投資として知られています。このNISAの改正が行われ、2024年から新しいNISAが導入されました。
注目したいポイントはどこにあるのでしょうか。また新NISAを賢く運用するためにはどんなところに注意すればよいのでしょうか。
本稿では、マネーセミナーなどに引っ張りだこのカリスマエグゼクティブプランナー、伊藤理沙さんに登場していただき、前編と後編の2回にわたって「新NISAの魅力」についてお聞きしました。
Profile:伊藤理沙(いとうりさ)
株式会社ZUU Wealth Management エグゼクティブプランナー。新卒で大手国内生命保険会社に入社。2010年保険営業優秀成績者に送られるMDRTを5年連続で受賞。2016年保険総合代理店に転職。資産形成セミナー講師では累計2,500人以上が受講した。2020年~2022年連続で保険業界の最高峰と言われるTOTに選出。現在、ファイナンシャルプランナーとして、マネーセミナー講師を中心に全国で活動している。
お問合せ先 >> pr@zuuonline.com
新NISAの改定ポイント、ここに注目
――いよいよ、2024年1月から新NISAが始まりました。現行NISAと新NISAとでいくつか違いがあると思いますが、伊藤さんから見て注目したいポイントはどんなところでしょうか。
現行NISAから新NISAへの変更点は主に5つあります。まず、2024年以降、いつからでも投資を始められるようになること、そして、投資の利益に対して非課税になる期間も無期限になることです。
また、投資できる年間上限額が拡大し、生涯にわたって保有できる非課税限度額が1,800万円に設定されました。最後の5つ目は従来のつみたてNISAと一般NISAが、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠となり、この2つの枠が併用できるようになることです。
現行NISA | 新NISA | |||
---|---|---|---|---|
つみたてNISA | 一般NISA | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
投資可能期間 | 2023年末で買付終了 | 恒久化 | ||
非課税期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
生涯投資上限額 | 800万円 | 600万円 | 1,800万円 (うち成長投資枠 1,200万円) |
|
投資商品 | 投資信託・ETF | 上場株式・ETF・ REIT・投資信託 |
投資信託・ETF | 上場株式・ETF・ REIT・投資信託 (高レバリッジ型の 投資信託は除く) |
両制度の併用 | 不可 | 可 | ||
売却枠の再利用 | 不可 | 可 |
こういった変更点の中で一番注目したいのは、非課税期間が無制限になったという点ですね。今まで、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年の期限がありました。ですから、これまでNISAで投資をしていた人たちは、非課税期間が終了する期限を気にしないといけませんでした。これはとても手間ですよね。
もう一つは金額です。これまでは年間投資上限額がつみたてNISAは年40万円、一般NISAは年120万円で、いずれか一方を選ばなければなりませんでした。
新NISAでは、つみたて投資枠(現在のつみたてNISAに該当)で年120万円、成長投資枠(一般NISAに該当)で年240万円となり年間投資枠が増え、さらにこの2つを併用できるようになりました。つまり、年間最大で360万円を投資できるようになったんです。
これはすごく思い切った改革で、国民にもっと投資をしてほしいという国からのメッセージなんじゃないかと私は思っています。
つみたて投資枠と成長投資枠、どちらがおすすめ?
――つみたて投資枠と成長投資枠では、どちらを選んだほうがいいですか?またそれぞれの枠でどんな商品を購入すべきかアドバイスをいただけますか?
どちらか一方の枠を選ぶのではなく、それぞれの枠の中でどんな商品をチョイスしていくかが大切だと思います。
つみたて投資枠の対象商品は、長期の積立や分散投資に適した一定の投資信託で、現行のつみたてNISAと同じです。一方、成長投資枠は、一部制限がありますが、一般NISAとほぼ同じく上場株式や投資信託が対象で、より幅広い商品から選ぶことができます。
ただし、成長投資枠では上場株式なども購入できます。もう少し積極的に投資に挑戦してみたいなら、成長投資枠を利用して高いリターンが望める個別株投資にチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
新NISAの最大のメリットは、金融商品から得た利益に税金がかからないことですから、株で大きな利益を得るほど恩恵は大きいでしょう。
新NISAを始めるときの注意点は?
――新NISAで損しないために気を付けたいことはありますか。
新NISAでは現行NISAと同じく損益通算ができないことを知っておく必要があります。NISA口座で生じた損失は税務上ないものとみなされるので損失の繰越控除はできません。
NISAでは利益が非課税になることだけに目がいきがちですが、当然、元本保証されているわけではありません。損した場合のことも念頭に置き、損益通算できないことをあらかじめ把握しておいたほうがいいでしょう。
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することです。上場株式等の投資を行って利益(譲渡益や配当など)が出た場合は税金がかかりますが、一方で損失が出た場合には利益から差し引いて、その分だけ税金を減らすことができます。それでもマイナスになった場合、確定申告を行うことで最長3年間損失を繰り越して控除することも可能です。
出典:SMBC日興証券
また、老後資金を確保するために新NISAを始めようと考えている人も多いと思います。老後資金を確保することを目的とする場合、安定的な投資信託を選んで定期的にコツコツと積み立てていくことが重要になります。
逆に、2~3年という短期でまとまった資産を作りたいという目的なら、成長投資枠で上場株式などを購入して運用すればいいと思います。
2022年12月時点
会社名 | |||||
取扱銘柄数 | 185本 | 183本 | 178本 | 157本 | 178本 |
最低投資金額 | 100円 | 100円 | 100円 | 100円 | 100円 |
積立コース | 毎月 毎週 毎日 |
毎月 毎日 |
毎月 | 毎月 毎日 |
毎月 毎日 |
ポイント還元 | Tポイント dポイント Pontaポイント JALマイル Vポイント |
楽天ポイント | Pontaポイント | マネックスポイント | 松井証券ポイント |
クレジット カード決済 ポイント還元率 |
三井住友カード 0.5%(※1) |
楽天カード 1%または0.2% (※2) |
au PAYカード 1% |
マネックスカード 1.1% |
ー |
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普通預金のように新NISAを活用しよう
――新NISAで資産形成するためにはどんなことが大切になりますか?
新NISAは現行NISAと同様、いつでも売却や払い出しが可能です。そのため運用して株価などが上昇したら売却して利益を得ようという人が多く出てくると思います。
儲かれば、当然、売却したくなりますよね。2021年の日経新聞の記事によると、投資信託の平均保有期間は2.5年だそうです。大多数の人は投資信託を始めても、2~3年で売却しているということがわかります。
老後資金を作るという目的を考えた場合、どんなに利益が出ていてもそのまま積立投資し続けるという意志の固さが大切です。続けるのが難しそうであれば、一定期間引き出すことができないiDeCoや個人年金保険などと組み合わせることをおすすめします。
――日本の中には投資に対して否定的な人もいます。
たしかに、日本はまだまだ欧米に比べて投資に対する意識が薄いように思います。「投資は怖い」「投資はギャンブル」「そもそも投資が分からない」等の理由で、普通預金にお金を預けっぱなしにしている人も多いのではないでしょうか。けれども、普通預金には「生活費3カ月分」のお金が入っていれば十分だと私は考えます。
不測の事態に備えるためにはいつでも引き出せるお金が必要ですが、余剰資金があるなら、少しでも増やすことを考えて新NISAにお金を移していくことをおすすめします。普通預金や定期預金ではわずかな利息しか付かず、お金はほとんど増えないからです。
新NISAは投資ですから多少なりともリスクがあるとしても、毎月お金を積み立てて、ある程度の期間、保有していれば、預貯金に置いたままにしているより、ずっとお金が増えていく可能性は高いと思います。
――新NISAでは枠の再利用ができるようになります。売却をすれば、翌年以降、投資枠が復活するという内容ですが、この枠の再利用により、さらに短期での売買が増えるようになると思いますが、いかがでしょうか。
新NISAで資産を作っていくことを目指すなら、基本的には複利で増やすことが効果的ですから、ある程度の期間保有しなければ資産は増えません。
どうしてもお金が必要な場合は売却すればいいと思いますが、できるだけ長く保有していたほうがいいですね。売ったり、買ったりを短期で繰り返すのは、あまりプラスにはならないでしょう。
ですから、もし先ほどの2.5年を目安とするなら、利回りの高い投資信託を買うか、成長投資枠で上場株式の売買を繰り返すか、目的に応じた運用が大切になります。
――少額から始められる新NISAは資産作りに最適と語る伊藤さん。後編は、初めての人が新NISAを始めるときのアドバイスをお伺いしました。必見です!
<参考文献>
金融庁「NISA特設サイト」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html
日経経済新聞「投信保有期間 じわり長期化、つみたてNISAは短期化」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00009_R20C21A4000000/