夫が死亡した場合、夫や妻の働き方や暮らし方に応じて、遺族年金が受け取れます。しかし、遺族年金を受け取っている人が老後の年金(老齢年金)が支給される65歳になったとき、遺族年金と老齢年金の両方ともを受け取ることはできるのでしょうか?ケース別に解説します。
公的年金の種類
公的年金と聞くと多くの人が老後に受け取れる「老齢年金」をイメージしがちです。しかし、公的年金は老齢年金以外にも、一家の大黒柱が死亡したときに遺族が受け取れる「遺族年金」、障害状態になったときに受け取れる「障害年金」があります。
また、3種類の公的年金はそれぞれ働き方や暮らし方などに応じて、基礎年金または基礎年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。
老齢年金 老後の保障として給付される年金 |
老齢基礎年金 |
老齢厚生年金 | |
遺族年金 働き手の方や年金受給者が死亡 したときに、その家族に給付される年金 |
遺族基礎年金 |
遺族厚生年金 | |
障害年金 病気やけがで生活や仕事が制限 されたときに給付される年金 |
障害基礎年金 |
障害厚生年金 |
遺族年金と老後の自分の年金が両方受け取れるケース
夫が死亡した場合、妻が遺族年金と老後の自分の年金が受け取れるのは以下のようなケースです。
・夫が会社員または公務員で妻が専業主婦・個人事業主
・夫が会社員または公務員、妻も会社員または公務員として勤務経験がある
それぞれのケースについてみていきましょう。
夫が会社員または公務員で妻が専業主婦または個人事業主
65歳以降、受け取れる遺族年金と老齢年金の組み合わせは以下のいずれかになります。
・遺族厚生年金+遺族基礎年金
・遺族厚生年金+老齢基礎年金
妻が専業主婦または個人事業主で、会社員または公務員として勤務していた夫が死亡した場合、残された遺族は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。また65歳以降、妻に老齢基礎年金の受給資格も発生しますが、遺族基礎年金と老齢基礎年金の両方は受け取れないため、いずれかを選ぶことになります。
なお、年間で受け取れる遺族基礎年金は「777,800円※+子どもがいる場合の加算」で計算をするのに対し、老齢基礎年金は777,800円×保険料納付済月数÷480で計算するため、ほとんどの場合遺族基礎年金の方が多くなる可能性が高くなります。
※令和4年度の場合
ただし、遺族基礎年金は18歳未満の子がいる配偶者であることが要件です。そのため、子どもがいないケースや、65歳時点で子どもがすでに18歳以上になっているケースなど、実質選択肢は老齢基礎年金しかない場合もあります。
夫が会社員または公務員、妻も会社員または公務員として勤務経験がある
65歳以降、受け取れる遺族年金と老齢年金の組み合わせは以下の通りです。
・老齢厚生年金+老齢基礎年金(老齢厚生年金額の方が遺族厚生年金額よりも多い場合)
・遺族厚生年金+老齢厚生年金+老齢基礎年金(老齢厚生年金額の方が遺族厚生年金額より少ない場合)
夫が会社員または公務員で、かつ、妻も会社員または公務員としての勤務経験がある場合、夫に万が一のことがあると、遺族厚生年金と遺族基礎年金が受け取れる点は前述のケースと同様です。
しかしこのケースでは65歳以降は、遺族基礎年金を選択することはできません。また、遺族厚生年金は、老齢厚生年金よりも受給額が大きい場合にその差額を受け取ることができます。老齢厚生年金額よりも、遺族厚生年金額の方が少ない場合、遺族厚生年金は全額支給停止となります。