◆加害者の治療的にも「日本版DBS」は有効

 また、日本版DBSは子どもと関わる仕事に対象が限定されるため「就労希望者の職業選択の自由は守られる」と斉藤氏は指摘しつつ、性犯罪再犯防止プログラムで用いられている認知行動療法の視点から解説します。

「例えばアメリカでは、性犯罪者の住所や犯罪歴などの情報を州当局が住民に一般公開することを認める『ミーガン法』などが施行されていますが、日本版DBSに関しては、あくまで管轄省庁が情報を厳格に管理しながら無犯罪証明書を発行するシステムをとっているので、子どもに関わる業種以外の職業選択の自由は限定的ですが保証されています。

 また、性犯罪再犯防止プログラムで第一選択治療法として用いられる認知行動療法的視点から考えても、ハイリスクな状況や引き金を避けるというのは再加害防止の大原則です。プログラムを受講している対象者は、みなこれを原則に子どもと関わる状況を適切に回避しながら再加害しない日常を積み重ねていきます。

 そういう意味では、今回の日本版DBSは社会復帰する入口段階で子どもと接する職種が選択できない仕組みは、治療的にも有効であると考えています。そういう意味では、社会の中で生き直しをはかっていきたい当事者を守る制度であるという見方もできるのではないでしょうか」