貯蓄目的で生命保険に入る落とし穴
生命保険の主な目的は、自身に万が一のことがあったときに自分自身や、遺族が経済的に困らないようにするためです。保険会社は、この保険制度を維持するため毎月の保険料から付加保険料を差し引いています。
付加保険料は、事務費や従業員に対する給与や広告費、家賃などに充当される経費のことで、他の資産運用ではかからない経費です。したがって資産運用として貯蓄型保険を活用するのは、資金効率が悪い運用方法といえます。
また生命保険は早期に解約をすると、大きく元本割れする可能性がありますが、預貯金の場合、普通預金であればいつでも引き出しができます。
金利では生命保険に見劣りしますが、流動性という観点では預貯金に分があるといえるでしょう。
結局、保険で貯蓄してよいのか、いけないのか?
生命保険の最大のメリットは、比較的少ない掛金で万が一のときに大きな保険金を受け取れる点です。
預貯金の目的にもよりますが、万が一のときにいつでも引き出したい貯蓄であれば、流動性という点で保険よりも預貯金のほうに優位性があります。
貯蓄でお金を増やしたいのであれば、まずNISAやiDeCoを活用したほうが生命保険よりも効率が良いかもしれません。控除という点でもiDeCoは掛金の全額が所得控除になるため、生命保険よりも優位性があります。貯蓄をするときは、まず貯蓄をする目的を明確にして商品を選びましょう。
貯蓄型保険が向いている人は?
このように生命保険は、保障という機能を除けば、すべてにおいて中途半端な位置づけにある商品といえるでしょう。
したがって貯蓄を目的として、貯蓄型保険が向いているのは、保険に葬式代や万が一の保障等、明確に保険に加入する目的があり、使わなかった結果、「副次的に」解約返戻金を受け取れることを期待している人です。
確かに払込保険料総額が解約返戻金を上回るのであれば、保険料払込満了まで保有していても損ではありません。しかし保障を主な目的としないのであれば、「もっと良い運用方法がある」と考えたほうが妥当でしょう。
文・金子賢司(ファイナンシャル・プランナー)
立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、FPとして活動を開始。FPの最上級資格CFP資格を取得し、個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターとしても活動中。保険領域を得意とする。