新型コロナウイルスの影響により2020年の音楽イベントが軒並み中止または延期……そんななか、いわゆる“3密”を避けて音楽を楽しむことができるインターネット上でのライブ配信に注目が集まっています。しかしライブハウスで公演するのとは違い、チケット代やドリンク代が取れるわけではないので、収益を得るのは難しいところです。ではライブ配信で収益を得るにはどのようにすればいいのでしょうか?今回、2020年6月で前店舗での営業を終了し、準備期間を経て9月に撮影スタジオに移転。そこで本格的に配信事業をスタートさせた沖縄県那覇市のライブハウス「G-shelter」のスタッフにお話を伺いました。

配信事業に移行した理由

──2004年に宜野湾市我如古(がねこ)の地下スペースからスタートしたG-shelterですが、2013年に那覇市安里(あさと)へと移転し、これまでバンドやアイドル、DJ、さらにトークのイベントなど文化の発信地として沖縄のシーンを支えてきました。しかしコロナ禍を受けて那覇市安里での店舗営業を2020年6月末で終了。なぜ大胆な決断に踏み切ったのでしょうか。

G-shelter :取引先の規模感が大きくなってきていたので、もともと広いスペースに引っ越す予定でした。けれどもコロナ禍で広い場所に引っ越すメリットがなくなってしまって……。

とはいえスケール感を落としても仕方がないので、今後の業態を考えたときに、ある程度の規模のスタジオがいいだろうと思っていました。そんなタイミングで、那覇空港近くで撮影スタジオとして使える理想の物件と巡り会うことができたんです。

──約7年続いた那覇市安里の店舗から那覇空港付近の撮影スタジオへと移転しました。あくまでも店舗営業をメインにオプションとして配信を手がけているライブハウスが数多くあるなか、インターネットの配信事業をメインに選んだ理由は。

G-shelter :なぜ配信事業に踏み切ったかというと、現状音楽業界でライブビジネスとして成立しそうなものが今のところ配信しかない状況だったからです。もちろん生のライブ自体がなくなることは望んでいません。

ただコロナ禍でライブハウス業態にしがみついても良い結果を生まないだろうという予感はしていました。まともな形で復活するのはかなり先になると思うので、その間しっかりと仕事となるものに対してアプローチしていきたいと思って音楽ライブができる撮影スタジオに引っ越すことに決めたんです。

配信事業での収益の上げ方

──それでは具体的にどのように収益を得ているのでしょうか。

G-shelter :今のところ配信ライブはどれも実験的で試行錯誤している状態です。ただマイクロビジネスとしては思ったよりも収益がありました。収益の獲得方法としては、まずはたくさんの方に見ていただきたかったので配信自体は無料で公開しました。

その代わり配信ライブを視聴しているリスナーの方にネットショップを見ていただいてTシャツなどのグッズを通販で買っていただいたんです。

──そのほか視聴者を増やすため、また収益を上げるために取り組まれていることはありますか。

G-shelter :基本的にはSNSで主導して、配信する映像コンテンツやネットショップにSNSから直接飛べる状態を作りました。それとドネーションが入ったら映像コンテンツの画面上に具体的な数字が出るようにしたんですね。

配信事業では制作側と視聴者がインタラクティヴであることが重要だと思うんです。そのためにも具体的に「あなたのお金が反映されていますよ」というドネーションの“見える化”にも取り組みました。