解除を免れることができるケース

一般の保険加入者は医療や保険についての素人だ。「これくらい病気のうちに入らないだろう」と思い込んでしまうこともあるだろうし、症状が軽微なうえ通院らしい通院もしていなければ、すっかり忘れてしまうこともあるだろう。また、営業員などの説明に問題があることもある。

保険会社と、あまり保険に詳しくない一般消費者とを同列に扱うのも酷な話だ。また営業員の不手際なのに、一般消費者に責任を負わせるのも適当ではない。これらの背景を踏まえて、解除や保険金・給付金の不払いまで至らないように定められていることもある。

1つめは、先に述べた「保険会社が知ってから1ヵ月以内に動かなかった場合」だ。最初から保険会社が告知義務違反を知っていた場合も、保険会社に解除権はない。また重大でなければ、保険約款により2年経てば解除権が消滅することもある。

2つめは、告知しなかった内容と保険金・給付金の支払いとが何の関係もない場合だ。内臓関係の疾患について告知義務違反があったが、交通事故で死亡したような場合だ。告知しなかった内容と交通事故には関係がないので、このような場合には保険金は支払われる。

3つめは、営業員などの存在だ。営業員などが正確な告知を妨害したり、嘘の告知をそそのかしたりすることもある(不告知教唆という)。営業員が「それくらい告知書にいちいち書かなくても大丈夫ですよ」と言うこともあるかもしれない。営業員の言うことを契約者は信じて従ったのに、それで保険会社に解除されてはたまらない。このような場合も保険会社は解除できないことになっている。

健康不安を正しく告知しても加入できることも

健康に不安要素がある人が必ずしも「保険に入れない」ということはない。悲観して保険加入をあきらめたり、告知義務違反をしたりする前に知っておきたいことがある。

質問内容が保険によって異なることも

保険の種類によって、告知事項が異なることもある。「がん保険」では一般の「医療保険」より告知すべき範囲は狭い。「がん保険」は「がん」だけを保障するので、別にがんに関係ない項目まで保険会社が把握する必要はないからだ。

また、同じ医療保険でも告知事項の範囲は各保険会社が個別に定めている。全体としては横並びだが、詳しく見ていくと同じ既往症でも告知の対象となったりならなったりすることはある。

告知書で問われていないことまで記入する必要はない。各社の資料を見比べながら、告知事項に自分の持病や既往歴が含まれていない保険商品を探すのも一つの方法だ。

「割増」「特定部位不担保」などの条件付きで引き受けてもらえることも

告知書に記入しなければならない既往歴などがあっても、内容次第で通常の加入が認められることもある。

また、特別な条件を付けることで普通の保険に入ることが可能なこともある。保険料が割増しになったり、受け取る保険金が削減されたりといった条件だ。最初から既往歴のある人向けの「無選択型保険」「引受基準緩和型保険」もあるが、それより有利なことが多い。

既往症と関係する部分は保障しないが、それ以外ならOKという条件付きの契約ができることもある。「胃」に既往歴があれば「胃」についての疾患の保障はしないという場合だ。身体の一部(部位)を保障しない(不担保にする)「特定部位不担保」と呼ばれる。

「自分の希望する一般の保険に入れないかもしれない」と思って、告知義務違反を犯してしまう前に、複数の保険商品の告知書をよく比較し、特別な条件で加入できないか可能性を探っていこう。