◆「払ったお金の分の対価を求めてしまう」推し活の苦しさ

――『推しが辞めた』はキラキラな推し活からそれぞれ事情を抱えたファンの話へと転落する物語の広がり方が本当に見事です。まず最初に物語の全体像を決めたのでしょうか?始まりと終わりのイメージだけを決めた形でしょうか?

オガワサラ:最後に描きたいことは決まっていました。「苦しいこともたくさんあるけど、オタクでよかったなと思えるような推し活がしたい」という願いを全編に散りばめています。

――推し活の“苦しい面”というと具体的には?

オガワサラ:例えば、握手会に行ったとしても「ちゃんと覚えられてるのかな」って不安になってしまうんですよね。ライブですごく良い席が当たっても「今日目が合わなかった!」って勝手にへこんだり(笑)。アイドルと分かっていながら、払ったお金の分の対価を求めてしまうことってあると思うんです。私も自分が思ってる以上のことが戻ってこないと、満足できない頃もありましたね。

オガワサラ:あとは推しに対しての距離だけじゃなくて、(推しにかけた金額を)周りのファンと比べてしまう部分もありました。現場に行くと、なんとなく分かってしまうので。

――最終回の脱稿時に「オタクが故に苦しみながら書いていた」とツイートされていましたが、具体的にどんなところが苦しかったのでしょうか?

オガワサラ:汚い感情をうまく伝えることが、結構難しかったです。あとは、オタクとしての感情をほとんどそのまま吐き出したような感じなので「これが皆さんに読まれるのか~」とは思っていました。

【オガワサラ】

DAYS NEOへの投稿をきっかけに、2020年ヤングマガジン38号に読み切り『pm7:20』が掲載。その後、第83回ちばてつや賞ヤング部門にて、『わたしのかみさま』で優秀新人賞を受賞。2021年6月からコミックDAYSにて『推しが辞めた』を連載開始。

Twitter:@saraogawa_

Instagram:@saraogawa_

<漫画/オガワサラ 取材・文/すなくじら>

【すなくじら】

映画やアニメ、漫画、アイドルなどのエンタメジャンルを得意とするライター・インタビュアー。休日はもっぱら動画配信のサブスク漬けで、Netflixオリジナルが三度の飯より好き。