専業主婦の方の中には、離婚を考えていても経済的な理由からなかなか決断できない人もいます。しかし、理由がお金のことだけであれば、事前に制度や手当を知り、準備することで解決できることもあります。今回は、専業主婦で子どもが1人いるIさんを例に、離婚を考えている人が知っておきたいお金のことについてご紹介します。
離婚前にかかる費用
離婚前に別居する場合
同居している間に離婚が決まればいいですが、Iさんは夫が離婚に応じなかったので、別居することを選びました。この場合、引っ越し費用やマンションの家賃、生活費などが必要です。また、Iさんは調停での解決を望んだので、調停費用や弁護士費用などもかかりました。
婚姻費用の分担
別居中の夫婦は、夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な「婚姻費用」を分担することになります。この婚姻費用の額は、夫婦それぞれの年収や子どもの数、年齢によって決まります。別居後どのくらいの婚姻費用がもらえるか予想を立て、足りない分をどのようにカバーするかをよく検討しておきましょう。
離婚後にかかる費用
Iさんは、調停で無事に離婚することが決まりましたが、離婚後は生活費と子どもの教育費が必要になります。さらにIさんの場合、結婚後は専業主婦だったので、将来の年金も心配です。
離婚後は働いて収入を得ることになりますが、シングルマザーには利用できる制度や手当もいくつかあります。それらを理解しておくと、離婚後にかかる費用の負担を軽減できる可能性があります。
知っておきたい公的制度と手当
養育費
離婚した妻が親権を持つと、元夫から養育費を払ってもらえます。相手の収入から養育費がどの程度になるのか、相場を確認しておきましょう。
慰謝料
Iさんの場合は性格の不一致が原因でしたが、不倫やDVが原因なら慰謝料を請求できる場合があります。慰謝料は「精神的苦痛を慰謝するための損害賠償」のことです。
財産分与
専業主婦で収入はなかったとしても、家を守る人がいなければ夫は仕事に集中できていないはずです。したがって、夫婦が結婚してから築いてきた財産は、平等に2分の1ずつ分け合うのが原則です。財産分与には(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配、(2)離婚後の生活保障、(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償と3つの性質があり、特に(1)が基本であるとされています。
結婚してからの築いた財産にどのようなものがあり、どのような評価額になっているのか、よく確認しておきましょう。
年金分割
財産分与の考え方と同じく、専業主婦が離婚すると、婚姻期間中の厚生年金も分割請求することができます。2008年4月以降に結婚した場合は、相手の合意が必要なく分割できるのがポイントです(3号分割制度)。
各種手当・支援制度
上記の他に利用できる手当・制度をご紹介します。自分で申請しなければお金がもらえないものも多いので、しっかり把握しておきましょう。
手当・制度名 | 説明 |
---|---|
児童手当 | 国と地方自治体が支給を行っており、 中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで) の子どもがいるすべての家庭に支給されます。 |
児童扶養手当 | 国と地方自治体から母子家庭または父子家庭に支給されます。 |
児童育成手当 | 各区市町村が条例を設置し、 ひとり親家庭の児童(育成手当)、 または障害をもった児童(障害手当)に対して支給されます。 |
ひとり親世帯 入居サポート |
家賃の補助や、優先的に公営住宅に入居できる制度を 採用している自治体もあります。 |
ひとり親家庭等 医療費助成制度 |
保護者や子どもが診療を受けた場合、 市区町村が自己負担額を助成します。 |
国民健康保険料 (税)の軽減措置 |
国民健康保険料を納めるのが難しい場合、 保険料の軽減が受けられます。 |
国民年金保険料の 免除制度・ 納付猶予制度 |
国民年金保険料を納めるのが難しい場合、 免除あるいは猶予が受けられます。 |
上記の他にも、ひとり親に独自に給付を行っている自治体もあります。自分が住んでいる市区町村の制度はしっかりと確認しておきましょう。
離婚後の資金はしっかり準備しよう
離婚前、そして離婚後に必要になる費用と、主にひとり親が利用できる手当・制度についてご紹介しました。離婚に限りませんが、無計画なまま新たな人生を始めると、あとで悔やむことになります。経済的な理由だけでためらっている方は、今回ご紹介した制度などを参考に、どれぐらいの支援を受けられるのか予想を立て、しっかりと準備するようにしましょう。
文・松岡紀史
肩書・ライツワードFP事務所代表/ファイナンシャルプランナー
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
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