特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」の支給開始年齢

定額部分の支給開始年齢も報酬比例部分と同様に生年月日や性別等によって違ってくる。

  • 1941年4月1日以前生まれ    60歳
  • 1941年4月2日~1943年4月1日生まれ     61歳
  • 1943年4月2日~1945年4月1日生まれ     62歳
  • 1945年4月2日~1947年4月1日生まれ     63歳
  • 1947年4月2日~1949年4月1日生まれ     64歳 ※第1号厚生年金被保険者の女性の場合は生年月日に5年プラスする

    定額部分の支給開始年齢は報酬比例部分と異なる点に注意したい。男性の場合1949年4月2日以後の生年月日となる人には、特別支給の老齢厚生年金の定額部分は支給されない。つまり、定額部分の受給資格に適う最も若い男性は1949年4月1日に生まれた人であり、この生年月日で生まれた人は、すでに69歳になっており、定額部分がこれから支給対象になる男性は原則として存在しない。

    一方、女性の場合、報酬比例部分と同様だが、男性とは生年月日による判定が5年ずれているため、1954年4月2日以後に生まれた人には定額部分が支給されない。現時点では64歳で定額部分が支給される人が残っている。

    このように、今後の定額部分の支給は一部の女性のみが支給対象となるので、これから特別支給の老齢厚生年金の支給が始まる人は、ほとんどが「報酬比例部分」のみを受給することになる。

    44年の特例「長期加入者特例」とは何か?

    特別支給の老齢厚生年金が把握できたところで、長期加入者特例の詳細を考える。この特例は、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分のみ受け取れる受給者に対して、厚生年金保険の加入期間が44年以上となれば、定額部分も同時に支給を受けることができるというものだ。具体的には以下の条件を満たす必要がある。

  • 特別支給の老齢厚生年金の比例報酬部分が受給開始年齢に達している
  • 厚生年金保険の加入期間が44年(528月)以上(共済組合等の加入期間を除く)
  • 厚生年金保険の被保険者資格を喪失(退職)している 例えば、1955年11月生まれの男性の場合、老齢厚生年金の支給開始年齢は、62歳からで特別支給の報酬比例部分が受け取れる。定額部分の支給はない。しかし、長期加入者特例を適用できれば、62歳から定額部分と報酬比例部分の合計額が支給されることとなる。

    長期加入者特例の注意点

    44年にわたって厚生年金保険の加入者として勤務してきた場合に、長期加入者特例が適用される可能性がある。しかし、注意しなければならない点もある。

    まずは、44年以上という加入期間であるが、厚生年金保険のみが対象となっている。共済組合等に加入していた期間は通算されない。公務員等として働いたことがある人は注意が必要だろう。

    もう一つは、長期加入者特例の条件に「厚生年金保険の被保険者資格を喪失」が含まれていることだ。つまり、通常の会社員として働き続けて厚生年金の被保険者である間は、長期加入者特例は適用されず、特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」は支払われない。44年以上の加入条件を満たしても、会社を退職するか、厚生年金保険の対象とならないほどに所定労働時間を減らす等の労働条件の変更をしなければ、長期加入者特例は適用されない。