就職活動のES(エントリーシート)や面接で、サークルや部活、ゼミでの役職経験をアピールしようと考えている学生も少なくないはず。“部長”や“ゼミ長”といった肩書きは、実際に企業が学生を採用するうえで果たしてどの程度まで重視されているのでしょうか?本記事では、新卒学生のためのスカウトサイト「iroots(アイルーツ)」を運営するエン・ジャパン株式会社に、リアルな採用基準や就活時に留意すべきポイントについて話を伺いました。

エピソードを通じて自分の“行動特性”を伝えることが重要

――大前提として、新卒時の就職活動においてこれまでの活動の役職経験をアピールすることは有効なのでしょうか。

エン・ジャパン株式会社(以下、エン・ジャパン) :単に“役職”そのものをアピールするのは得策とは言えません。学生時代にどんな立場であろうと、本人が『何に、どのように取り組んだのか』という具体的な中身が重要だからです。採用プロセスの中で、役職があるからという理由だけでは自動的に高い評価にはなりません。

――実際のところ、採用活動にあたって企業側は“学生時代の経験値”をどの程度重視しているものなのですか?

エン・ジャパン :例えば、『高校時代に体育会系の部活動で部長を務めた』という経験そのものが合否に影響を与えることは、ほとんどないと言っていいでしょう。

企業は、選考を通じて応募者が『入社後に活躍できるかどうか』を見極めようとしています。その判断材料の中で大きなウェイトを占めるのは、活動経験の中身や事実を把握することで見えてくる応募者の“行動特性”です。

――“行動特性”という言葉について、もう少し詳しく教えてください。

エン・ジャパン :仕事で成果を出すためには、自分の知識や能力を使って具体的な行動を起こすことが不可欠ですよね。部長や幹事などの肩書きはあくまでも与えられた“役割”に過ぎないため、それだけでは行動特性を推し量ることはできません。

『課題解決のために行動して成果を出せるか』を採用担当者に把握してもらうためには、これまでの経験とそこでの取り組みを事実ベースでわかりやすく伝えることが大切です。

就職活動に“模範解答”は存在しない

――では自身の行動特性を伝えるうえで、注意すべきポイントを教えていただけますか?

エン・ジャパン :ありのままのご自身の取り組みを具体的に、かつ事情を知らない第三者にとってわかりやすく伝えるために、ESはできる限り複数の方に添削してもらうことを推奨します。内定を取得して就活を終えた先輩や身近な社会人、または大学のキャリアセンターの方に依頼するのも良いでしょう。

――「こんなESは好印象です」といった“模範解答”のようなものはあるのでしょうか。

エン・ジャパン :採用基準は企業によって異なるため、ES・面接を問わず就活に“模範解答”は存在しないと考えておくべきです。Web上で公開されているESをコピーして継ぎはぎする方もいますが、人事は細部の違和感に気が付きます。

そもそも、どんな形であれ自分を偽って入社をすると必ず後悔しますし、貴重な20代のキャリアを棒に振ることにもなりかねません。

――学生時代には、勉学のほかにもサークル、ゼミ、部活、留学、アルバイト、インターン、ボランティアなど、さまざまな経験を積むことができます。採用する企業によって違いがあるのは当然として、学歴や語学力といった要素以外で“強み”になりやすい経験とはどんなものなのでしょうか。

エン・ジャパン :企業が求めている人物像や業界・職種によって明確に異なるのですが、強いてあげるとすれば、入社後の活躍がイメージしやすい経験ではないでしょうか。

その意味で、長期インターンやアルバイトのように対価を得て実際の仕事をしたという経験は、比較的わかりやすい強みだと言えるでしょう。一方でメーカーの研究職などの場合は、学生時代の研究内容やそこでの成果が重要になってきます。