街のあちこちで見かける大手コーヒーチェーン店。とくに都心では、お手頃価格が人気のカフェチェーンがある一方で、高級志向の老舗・喫茶店チェーンもあります。私たちに身近なコーヒー1杯の価格から、各企業の戦略とターゲットの捉え方を紐解いてみましょう。
二極化が進む?コーヒー1杯の価格の違いは?
おしゃれなカフェもいいけれど、ちょっとした休憩や待ち合わせ、作業をする場合はコーヒーチェーン店を利用する人も多いでしょう。たとえばカジュアルスタイルの「ドトールコーヒーショップ」や、ゆったりと過ごせる老舗の「喫茶室ルノアール」など。どちらも主力商品はコーヒーですが、その価格には大きな違いがあります(以下、価格はすべて店内飲食の場合・税込表記)。
ドトールコーヒーショップ:「ブレンドコーヒー」のSサイズは224円
一部店舗で価格が異なりますが、多くの店舗では「ブレンドコーヒー」のSサイズが224円で提供されています。またMサイズは275円、Lサイズは326円となっています。
喫茶室ルノアール:「ルノアールブレンド」は1杯500~600円前後
喫茶室ルノアールも店舗によって価格が一部異なりますが、メニューにある「ルノアールブレンド」は1杯550円提供されています。サイズ展開はありません。
ブレンドコーヒー1杯の価格は、およそ2倍も違う!
このように「ドトールコーヒーショップ(以下、ドトール)」と「喫茶室ルノアール(以下、ルノアール)」で提供されているブレンドコーヒーの価格を比べてみると、およそ2倍の違いがあることがわかります。ちなみに、ほかのチェーン店を比べてみるとどうでしょう。
ドトールと同様に高い知名度を誇るカジュアルチェーン「サンマルクカフェ」では、ブレンドコーヒー1杯の価格がSサイズで220円、Mサイズで275円、Lサイズで300円です。
一方で、都心でも人気上昇中の喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」ではブレンドコーヒーの価格は430~580円。やはり低価格のチェーン店とは2倍程度の差があります。
主力メニューのコーヒーにこれほどの価格差が生じているのは、どのような理由によるものなのでしょうか。
ドトールとルノアールの本質的な違い
ドトールの特徴
ドトールは、2020年5月末時点で1,091店舗展開されています。1980年に東京・原宿で1号店が開店して以降、低価格を強みに店舗数を増やしてきました。
ドトールは、もともとコーヒー豆の焙煎・卸売会社として1962年に創業、自社で豆の調達から焙煎までを一貫して行っているというこだわりがあります。
標準店舗の面積は35坪とコンパクトで、セルフサービスコーヒーの草分け的存在。お財布にも優しく気軽に立ち寄れるコーヒーショップとして、幅広い世代から人気を集めていると言えるでしょう。
ルノアールの特徴
一方のルノアールは従来の“喫茶店”として店員が席で注文をとり、料理や飲み物ができあがれば席まで運んでくれるフルサービス式のスタイルです。
ルノアールは1964年に日本橋で1号店がオープンし、2019年3月期の決算資料によれば全国で90店舗展開されています。
30歳以上の客層やビジネスユースをターゲットにしており、店舗面積は40~70坪程でゆったりとした空間で、大正ロマンをイメージした落ち着きある内装が特徴です。