前作『X エックス』のタイトルに込められた別の意味を改めて実感!!

 前作『X エックス』に登場した殺人老婆パールの前日譚となる今作。介護が必要な父と介護疲れで精神的に限界にきている母、そして戦争に行ってしまった夫。

精神的に余裕のない抑圧された時間のなかで、一方ではのどかな、のどか過ぎる農場で流れる時間は、自由が有り余っているという真逆の環境に立たされている。

 同じ環境で自由と不自由が共存しているという矛盾した環境は、良くも悪くも現実から目を逸らすことには適しており、現実逃避が行き過ぎてしまうこともあって、それが現実なのか幻想なのか、その境界線がパールの中であやふやになってしまっていることがわかる。

 戦争やスペイン風邪の流行という、先が見えない未来に夢を見たパール。それはたったひとつの希望であり、彼女が見ていたったひとつの世界でもあったのだが、それが壊れてしまった場合、パールはどうなってしまうのだろうかという不安がスクリーンを通してじりじりと伝わってくる。パールを取り巻く周りのキャラクターたちがパールに抱く不安感を共有しているようでもある。