しかしはたして本当に「VIVANT」は別班のことなのか。時折挟まれる回想シーンからして、乃木は幼少期に両親が何らかの組織の犯行の犠牲になり、自らも拉致された過去があると見ていいだろう。フランス語の「VIVANT」の和訳「生きている」が、乃木が何らかの事件の「生き残り」を意味するとも考えられる。野崎が言及していた、得体の知れない謎の組織「テント」と関係があるのだろうか。野崎が調べた乃木の経歴には「怪しいところがひとつもなかった」とのこと。乃木が本当に公には存在が認められていない別班の諜報員なのだとしたら、乃木の過去の経歴が改ざんされていても不思議ではない。ザイールやその背後にいる組織・テントの話を聞くと、乃木がその情報の出どころを野崎に確認していたのも気になる行動だった。

 ただ、乃木の命を救ったバルカの少女・ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)は人間の善悪を直感的に見抜くことができるといい、乃木のことも信頼していた。となると、やはり乃木の二重人格的な要因がカギとなるのか。前回も触れたが、マルチリンガルでCIAに親友がおり、イスラム教の作法にも通じ、手に乗せるだけで1kgまでならほぼ10gの誤差に留めて重さを量れるという謎の特殊能力を持つ……とてもただの冴えない商社マンには思えない。乃木にしか見えない“もうひとりの乃木”が妙に野崎を警戒しているのも気になる。いったい乃木憂助とは何者なのか。こここそが本作の最大の謎といえそうだ。

 本作のキャッチコピーでもある「敵か味方か、味方か敵か」の通り、裏切りを重ねて進むストーリーに毎回ハラハラされられることになることを考えると、野崎の推理どおりにそのまま「VIVANT」が別班を意味するとは考えにくい。テロ組織の幹部であるザイールですら、“VIVANT”が目の前に現れたと知るや、「家族を守るために」自爆を決行するほどであり、一国家の裏組織にとどまらない、もっと恐ろしいもののように思える。

 裏切りといえば、第2話では大使の西岡が裏切り、逆にいかにも怪しそうな行動を取っていた通訳のナジュムが野崎に協力していた。来週からは舞台は日本に移り、誤送金問題の謎に挑むことになりそうだが、ここでも意外な人物に足元を救われる展開になりそうなのは想像にたやすい。薫がジャミーンを託した看護師のイリア(真凛)も気になる存在だ。ドラムに渡すためのジャミーンの薬や点滴を、病院へ捜査にきたチンギスの目の前で落としてしまうシーンがあったが、チンギスは特に問い詰める様子もなく親切に拾い上げて渡し、院内へ入っていく。実はこれが伏線になっており、後に乃木たちをピンチに陥らせることになるのでは……というのは考えすぎだろうか。いや、逆にそれぐらいスリリングな展開に期待したい。