◆オスカー・アイザックの“静”の演技の凄みと、こぼれるような色気に注目

映画『カード・カウンター』
『カード・カウンター』より
ポール・シュレイダーが監督・脚本、マーティン・スコセッシが製作総指揮と『タクシー・ドライバー』の2人が45年ぶりにタッグを組み、主演はオスカー・アイザック。そんな約束された布陣、観るしかないじゃないか!

ウィリアム・テルと名乗る男は、刑務所に収監されている10年の間にポーカーのスキルを取得。目立ちすぎない賭け方のギャンブルで各地のカジノを巡り、細々と生計を立てていた。ある日、元上官の講演会で己の過去を知るカークという青年と出会い、消すことのできない自分の過去と向き合わざるを得なくなる。

たとえそのルールがわからなくとも、ポーカーやブラックジャックのシーンはスタイリッシュで魅力的。ほの暗くシャープでザ・ノワールな画面に満ちる緊張感と、そこに佇(たたず)む虚無をまとったアンニュイなオスカー・アイザックの静の演技の凄みと、こぼれるような色気といったら。

賭け事をする時の冷静で洗練された雰囲気と、相棒のようになったカークに父性のような思いを抱き、自身の中に芽生えた愛情をギャンブル・ブローカーのラ・リンダに不器用にも勇気をもって伝えようとする様子のいじらしさとのギャップに胸を摑(つか)まれた。