伝統芸能であり、師匠と弟子の世界である猿回しにも令和の「働き方改革」が進みつつあるようだ。従来、業務時間外の稽古を前提に猿回したちは芸を磨いていたのだが、業務時間外に稽古をしろと言えない時代になり、教育担当の「ジュニア」は芸のレベルが落ちているとも話す。

 22年の新入社員は10名。そのうちの一人だった齋藤は、日光さる軍団を辞めたいとジュニアにLINEで伝えていたものの、その後、同業他社と思しき知り合いと連絡をとり、他社は日光さる軍団よりも残業代が払われにくいことを知り、辞意を撤回した。

 また藤倉は、動物とショーがしたく、動物園に就職してもショーの担当者になれると限らないからと日光さる軍団に就職。部活で鍛えた和太鼓は相当な腕前だが、村崎に芸を披露する新人総見の場では出鼻をくじかれ、最後には表情がすっかりこわばってしまいと、ほろ苦いデビューとなった。

 中村はロッカーの中にジュースの空き缶が無造作に放置されているなど、片付けは相当苦手なようだが、残業代の申請はしっかりしていた。家に帰ったら気が付けば朝という激務の生活で、夏には体重が入社時から10キロ以上痩せていたという。

 年末年始は日光さる軍団の稼ぎ時であり、猿回したちは全国各地に散って、興行を行う。中村も千葉県・鴨川に相棒の猿・キャサリンと共に向かう。神社近くで初詣客を相手にした中村の初公演は盛況となっており、おひねりもたくさん集まっていた。

 しかしその正月の繫忙期を過ぎてまもなく、中村の姿が社内から消える。ジュニアのもとには中村から長文のLINEが届き、その中には「そもそもこの仕事に向いているのかわからなくなりました」「命を扱う仕事を自分がしていいのか」「何もかも中途半端でズルい自分が嫌で大っ嫌いです」「考える時間をください」と苦悩する文言が並んでいたのだった。

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