民放でも同様の傾向があり、昨年いっぱいでTBSを退社した国山ハセン氏はビジネス映像メディアを運営する企業で「映像プロデューサー」を務めながらタレントとしても活動。元日本テレビの桝太一アナは、フリーアナとしての活動も継続しつつ、同志社大学ハリス理化学研究所の助教として研究職の道を歩んでいる。また、元テレビ朝日の富川悠太氏は昨年4月にトヨタ自動車に入社し、オウンドメディア「トヨタイムズニュース」のキャスターを務めたり、不祥事で降板した香川照之に代わって同社のCMに出演したりしている。

 「脱フリー」傾向が強まってきた背景には、フリーアナ業界の競争の激化が指摘されている。テレビでレギュラーを持てるような華やかな活躍をしているフリーアナはほんの一握りで、イベント司会などの営業がメインになっているケースが少なくない。女子アナで過激グラビアなどのお色気路線に走るような事例もあり、アナウンサーなのかタレントなのかよくわからない状況になっていることも珍しくない。神田アナは先月放送の『ぽかぽか』で、「NHKにいた時は、アナウンサーの仕事をしてないフリーアナウンサーを『何だ?』と思ってました」と本音をこぼした後、辞めてみて初めて「フリーアナにアナウンサー本来の仕事はなかなかこない」という状況があることを知ったと話していた。

 それでも、NHK出身者は有働アナや武田アナ、TBS系『報道特集』のメインキャスターを務める膳場貴子アナなど民放で別格の扱いとなっていたアナウンサーも少なくないのだが、最近では全国ネットのレギュラーが消滅した堀尾正明アナらのように失速するパターンも増加。バラエティを中心に活躍を見せている神田アナのように、NHKブランドに頼らない武器を身につけないと生き残りが難しくなってきている。

 加えて、テレビというメディア自体が斜陽化し、業界にしがみついているメリットがかつてほどなくなったことも、フリーアナへの転身をためらわせている要因のひとつだろう。

 かつてフリーアナは局アナと比べて収入が大幅増するとして羨望の的だったが、独立後に鳴かず飛ばずになるくらいなら、やりがいのある別の仕事に転職したほうがいい……と現実的な判断をするケースが増えてきたのかもしれない。今後さらにフリーアナ業界の競争が加速していくのは必至で、熾烈な生き残りバトルを避け、退社後に別業種を選ぶ「脱アナ」の動きが進みそうだ。