「ちょっと、体がもたないかもしれないですね。もうちょっと別の場所ないですか?」
有吉のギブアップ宣言。これを受け、もう少し流れが穏やかな下流でパイプの穴に竿を突っ込んでうなぎを釣る方法にシフトするのだった。
改めて有吉のロケVTRを見てみると、あることに気づく。有吉は、スタッフにていねいな敬語を使う。もちろん若手芸人とかであれば敬語もわかるし、ベテラン芸人であってもカメラが回っていないところでの敬語は普通だったりするのだろうが、それなりのキャリアがあるなか、カメラの前で有吉ほどスタッフにていねいな言葉遣いをしている芸人はあまり例がないように思う。キツめのツッコミを入れるような場合は別だが、有吉がスタッフとロケをする場合には基本的には敬語ベースでコミュニケーションが進行していく。
そのようなていねいな言葉遣いが振り幅となり、川のちょっとした滝のなかに顔を突っ込むような“異常”さがより浮き彫りになるのだろう。社会人としての“正常”な振る舞いが“異常”な行動のおかしみを引き立てるのだろう。こうなってくると“異常者”が世を忍ぶ仮の姿のごとくバカていねいに敬語を使っているようで、そっちの見方でもおかしみが深まっていく。
有吉は普段着で、敬語で、“異常”をやる。そんな有吉がうな重をつくった結果、素人が見様見真似でつくった味は「めっちゃまぁまぁ」というごく普通の結論に到達し、一方、うなぎを焼いた囲炉裏で焼いたつきたての餅はめちゃくちゃうまいという、これまたごく普通の結論にたどり着くところにもまた、“異常”と“正常”をシームレスに行き来する有吉らしさを感じた。
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