【魅力その2】「異世界」設定だからこそ!「食との出会いの喜び」!

「居酒屋のぶ」の魅力を語る上で外せないのが、「食との出会いの喜び」である。「居酒屋のぶ」では、「料理の美味さ」もさることながら、「異世界人がお気に入りの現代料理に出会う喜び」が中心に描かれている。

 そしてこのマンガ内で表現されている「食との出会いの喜び」の魅力は、現代日本を舞台にした他の料理マンガでは再現不可能であり、「異世界」という設定だからこそ確立できた魅力である。

 なぜなら現代日本を舞台にした場合、この「我々が知っている現代料理」と「その料理に初めて出会うシチュエーション」というのは、およそ両立が難しい。日本人の大人が「“ナポリタン”という食べ物なんて聞いた事はなく、今日この店で初めて出会った」と言っても、あまりに現実感がなさすぎる。そもそもの出会いを表現する事ができないのだ。そのため他マンガでは、このような場合は「ナポリタン」の思い出を懐古するようなストーリーが主となる。そう、「ナポリタンの味」ではなく、キャラクターの「ナポリタンに対する思い」が中心となるのだ。

 しかし本作品では、その「ナポリタン」の味そのものの感想を、キャラクターがストレートに賛美する。日本人にとっては食べ慣れた料理でも、異世界人にとっては初めての味。料理自体の魅力を存分に語る彼を通じて、我々は自身が初めて「ナポリタン」に出会った幼少期の感動を思い出す。

 通常の料理マンガが「美味い料理」を表現するのに対し、「居酒屋のぶ」は美味しい食に「出会う喜び」も表現されているのだ。