◆見る者の心を強く打つ理由
第10話の具体的な場面を見てみよう。例えば、ワーキングスペースで昇進試験のための勉強を始めた吉野みち(奈緒)と新名誠(岩田剛典)の帰り道。歩道橋を歩くふたりを手持ちカメラが正面からじりじり捉える。
割と長いワンショット中、新名の視線は終始みちに向けられている。その間、岩田の視線がぶれることは絶対にない。
新名の冷めない気持ちが持続していることを表現しているのだが、それと同時に(いやそれ以上に)岩田のこの揺るぎなく、狂おしいまでの視線の強さに驚く。
歩道橋という限られた場所を一瞬で何か別の空間に変えてしまう。視聴者の視線はすぐさまで釘付けになる。これが彼の演技を見る者の心を強く打つ理由ではないか。
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