ダブルヒガシも『第58回上方漫才大賞』ではトップバッターだったにもかかわらず、会場を大きく盛り上げていた。『ワーワーJAPAN』では、いつもシビアな『上方漫才大賞』の舞台監督から「トップバッターでこんなにウケたのは見たことがない」というふうに絶賛されたのだという。その言葉が余計に、カベポスターの強さを際立たせているように感じた。

 また、ドーナツ・ピーナツも素晴らしかった。披露したネタは、ピーナツが「犬を飼いたい。そのためには犬の気持ちを理解したい。今日から犬になりきるので、俺を飼ってほしい」とドーナツにお願いするもの。このネタは最近、ドーナツ・ピーナツの舞台で何度も見かけるもの。各賞レースに向けてブラッシュアップしていることがわかる。犬になりきりすぎてシンプルに「ヤバいやつ」へ変貌するピーナツを、北九州市出身のドーナツが方言全開でツッコむ内容なのだが、このドーナツのブチギレツッコミがここ1年くらいで目覚ましく飛躍。偉そうな言い方で恐縮だが、見るたびに凄くなっている。ドーナツのツッコミが同コンビの漫才のテンポ感……というよりグルーヴ感を生み出している。

 千鳥のノブ然り、近年全国的にウケている方言ツッコミ。なかでもドーナツの北九州の地元丸出しなブチギレツッコミは、語感、キレ、ワードチョイス、すべての面で完ぺきに近いのではないだろうか。そんなドーナツのツッコミをどんどん乗せていくピーナツの存在は、もはや“怪物”である。かわいらしいルックスから繰り出される変態的思考と勘違い発言の数々。何をしても、何を言っても許されるような愛嬌抜群の見た目だからこそ、余計に厄介に映る。筆者個人は『第58回上方漫才大賞』の全組のネタを見終わったとき、「ドーナツ・ピーナツが勝ったんじゃないか」と思ったほどだった。

 そんなツワモノたちを退けた、カベポスター。2021年に『第6回上方漫才協会大賞』、2022年に『第11回ytv漫才新人賞』『第43回ABCお笑いグランプリ』優勝など近年の関西の主要新人賞を獲りまくっていて、まさに無双モードに入っている状況。年末のビッグタイトルも十分狙えるだろう。