東京へ来てからずっと、好きな植物のためにまっすぐ走り続けてきた万太郎(神木隆之介)。植物学の雑誌を作りたいという新しい夢も、発足したばかりの植物学会の学会誌という形で叶うこととなり、気難しい田邊教授(要潤)の許しもゲット。いつも文句を言っていた大窪助手(今野浩喜)も、万太郎から「学会誌の監督」という地位を打診されて、すっかり味方に。何もかも順調、これからもこんなふうに走っていくんでしょうね……と思っていた万太郎が突然立ち止まり、寝転んでぼんやりと空を見上げる事態に。

 大好きな植物学に身が入らず家にこもってしまうほど、万太郎が元気をなくしてしまった原因は、恋。手が届かないガラスの向こうへと連れ去られる、失いたくない夏の最後のバラ、美しい寿恵子さん(浜辺美波)への想い。寿恵子さんのドレス姿、とてもきれいでしたね。万太郎が「きれいじゃ……」以外の言葉を失ってしまうのも当然。ダンスを教えてくれるクララ(アナンダ・ジェイコブズ)の優雅さに見せられ、ドレスの採寸のために躊躇なく帯をほどく。寿恵子の、新しいことへ挑戦する思い切りの良さは、亡くなったお父さん譲りなんでしょうね。見た目の愛らしさだけでなく、生き生きとした内面が彼女の魅力。初めて見たティーカップ入りの紅茶を、緑茶のように飲み、おいしさに目を輝かせる。飲み方は間違っているけれど所作は美しい。父の冒険好きな性質と、母からの教えを、どちらもきっちり受け継いでいる。